【法人向け】Chromebook で Microsoft 365 を使う3つの方法を解説
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「Chromebook の導入を検討しているが、社内で Microsoft 365 が使えないと困る」
「Excel や Word のファイルを日常的に使っているため、Chromebook に移行できるか不安」
Chromebook は低コストで管理が簡単というメリットがある一方、「Microsoft 365 が使えないのでは」という懸念から導入をためらう企業も少なくありません。
そこで今回は、「Chromebook で Microsoft 365 を使う方法」をテーマに、基礎知識から具体的な利用方法、注意点まで詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。
<この記事でわかること>
- Chromebook で Microsoft 365 を利用するための基礎知識
- Microsoft 365 を使う3つの具体的な方法
- 法人利用時の注意点と意識すべきポイント
※ 各製品・サービスに関する内容は2025年12月時点での情報です。
Chromebook で Microsoft 365 を利用する3つの方法
タイトルでもある「Chromebook で Microsoft 365 を使う方法」とは少しそれますが、そもそも Chromebook には標準で Google が提供する Google ドキュメント、Google スプレッドシート、Google スライドといった文書作成ツールが搭載されています。これらのツールは、Chromebook の環境に最適化されており、Microsoft 365 のファイル形式(docx、xlsx など)の読み込み・編集も可能です。
Microsoft 365 を使う方法を探るのではなく、まずはそれらの機能で業務要件を満たせるかを検討するのもひとつの選択肢です。

しかし、会社として Microsoft Office アプリでのデータ処理が必須だったり、特定の業務や取引先とのやり取りで Microsoft 365 のネイティブ機能(高度なマクロ、特定のUIなど)が必要だったりする場合は、これから解説する以下の3つの方法で Microsoft 365 を導入することになります。
- Web版(ブラウザ版)の Microsoft 365 を利用する
- Microsoft 365 のアプリ化(PWA)して利用する
- 仮想デスクトップ(VDI/DaaS)経由で利用する
利用する部署の業務内容や、必要とする機能のレベルに応じて最適な方法を選択することが重要です。
方法1|Web版(ブラウザ版)の Microsoft 365 を利用する
Web版の Microsoft 365 は、Chromebook で Office 機能を利用する上で、最も標準的な方法です。Chrome ブラウザを開き、Microsoft 365 のポータルサイトにアクセスしてログインするだけで、Word、Excel、PowerPoint、Outlook などをすぐに利用できます。
法人利用のメリット
デバイスへのインストールが不要なため、管理者によるセットアップやアップデートの手間が少なく、常に最新版の機能が利用できます。デバイスのスペックに依存しにくく、インターネット接続があればどこでも快適に動作します。また、複数ユーザーでのリアルタイム共同編集機能が強力で、クラウドでの業務遂行に最適です。
注意点
Windows デスクトップアプリと比較して、VBAマクロ、高度なグラフ・ピボットテーブル、複雑なデータベース連携など、一部の高度な機能は利用できません。
また、基本的にオンライン接続が前提となります(簡易的なオフライン利用は可能ですが、編集機能は限定的です)。
方法2|Microsoft 365 をアプリ化(PWA)して利用する
かつて Chromebook では、Google Play ストアから「Android アプリ版 Office」をインストールして利用するのが一般的でしたが、現在はサポート方針が変更されています。
Microsoft は 2021年9月をもって、Chromebook 上での Office モバイルアプリ(Android版 Word、Excel、PowerPoint)のサポートを終了しました。現在、Google Play ストアで配信されているアプリは、基本的にWeb版へのショートカットとして機能する仕様に変更されています。
そのため現在は、Web版の Microsoft 365 をPWA(Progressive Web Apps)※としてインストールし、デスクトップアプリに近い感覚で利用する方法が標準となっています。
※PWA(Progressive Web Apps)とは、Webサイトを端末上のアプリのように扱える技術のことです。ブラウザのアドレスバーなどが表示されない独立したウィンドウで起動するため、よりデスクトップアプリに近い感覚で作業に集中できます。
法人利用のメリット
旧来の Android アプリ版はタッチ操作(タブレット)主体でしたが、PWAは Chromebook のキーボードやマウス、トラックパッド操作に最適化されています。PCとしての生産性を損なわず、快適に操作可能です。
注意点
方法1と同じく、実体は Web版(クラウドベース)であるため、基本的にオフライン環境では利用できません。ファイルの保存や編集には常時インターネット接続が必要です。
また、Windows デスクトップアプリと比較すると、VBAマクロ、高度なデータ分析機能などは利用できません。あくまで「Web版」の機能をアプリの枠で表示しているものである点に留意が必要です。
方法3|仮想デスクトップ(VDI/DaaS)経由で利用する
上記2つの方法では対応できない、フル機能の Windows デスクトップ版 Office が必要な業務のために用意された選択肢です。
Microsoft Azure Virtual Desktop(AVD)や Amazon WorkSpaces などのクラウド型仮想デスクトップサービス(DaaS)を利用し、Chromebook からリモートでアクセスします。

法人利用のメリット
Windows 環境でしか動作しないVBAマクロや専用アドイン、レガシーシステムとの連携など、全ての Office 機能が利用可能です。
また、データはすべてクラウド上のサーバーに保存され、Chromebook 本体にはデータが残らないため、高いセキュリティを実現できます。
注意点
VDI環境の構築・維持には、ライセンス費用に加え、サーバー運用費や専門知識が必要となるため、最もコストがかかります。
この方法で利用する場合、Microsoft 365 Apps for enterprise などの「共有コンピューター認証 (Shared Computer Activation)」に対応したライセンスが必須となります。詳しくは次章で解説します。


法人利用で必須となるIT管理者のチェック項目
Chromebook と Microsoft 365 の組み合わせを円滑に導入するためには、利用方法の選定に加え、セキュリティやライセンス、管理体制に関する専門的な確認が不可欠です。押さえるべき3つの重要事項を解説します。
- ライセンス要件の確認
- セキュリティとアクセス管理
- 互換性と利用制限について
ライセンス要件の確認:適切な Microsoft 365 プランは?
Chromebook で Microsoft 365 を利用する際は、利用する機能と形態によって必要なライセンスプランが異なります。特に、VDI(仮想デスクトップ)を利用する場合には注意が必要です。
Web版(ブラウザ版・PWA)の利用
方法1(Web版)と方法2(PWA 版)を利用する場合のライセンスです。以下のようなWeb版 Office が含まれる一般的な法人向けライセンスであれば、どのプランでも問題なく利用可能です。
- Microsoft 365 Business Basic
- Microsoft 365 Business Standard
- Microsoft 365 Business Premium
- Microsoft 365 Apps for business
仮想デスクトップ(VDI/DaaS)経由での利用
方法3(VDI)を利用する場合、複数のユーザーが仮想環境を共有するため、「共有コンピューター認証(SCA:Shared Computer Activation)」に対応した特別なライセンス権限が必要です。
利用可能なプラン(SCA対応)は以下の通りです。
- Microsoft 365 Business Premium
- Microsoft 365 Apps for enterprise
- Office 365 E3/E5
利用できないプラン(SCA非対応)は以下の通りです。
- Microsoft 365 Business Standard
- Microsoft 365 Apps for business
- Microsoft 365 Business Basic

セキュリティとアクセス管理
Chromebook は ChromeOS の持つ強固なセキュリティ機能(サンドボックス、自動更新など)が特徴ですが、Microsoft 365 のデータ保護機能を組み合わせることで、さらに強靭な環境を構築できます。
シングルサインオン(SSO)とID管理
Google Workspace と Microsoft Entra ID (旧 Azure AD)を連携させ、シングルサインオン (SSO)を実現することで、管理負荷軽減とセキュリティ向上が期待できます。ユーザーは一度の認証で Chromebook と Microsoft 365 の両方にアクセスできるようになります。

条件付きアクセス(Conditional Access)
Microsoft Entra ID の機能を利用し、Chromebook からのアクセスのみを許可する、あるいは「特定の地域」からのアクセスをブロックするといった細かなアクセス制御を設定することで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
データ損失防止(DLP)
Microsoft 365 のDLP機能や、Google 管理コンソールの機能を利用し、機密性の高いドキュメントが Chromebook から外部に持ち出されたり、不適切な方法で共有されたりすることを防ぐ設定も検討するといいでしょう。
互換性と利用制限について
多くの業務はWeb版で十分対応可能ですが、以下のようなケースでは互換性の問題が発生する可能性があります。
VBAマクロの利用
Web版および Android 版 Office では、基本的にVBAマクロは実行・編集できません。VBAを多用する部署には、フル機能が使える仮想デスクトップ(方法3)の導入を検討することが、最も現実的な解決策です。
フォントやレイアウトの崩れ
Web版でも再現度は高いですが、特殊なフォントや複雑なレイアウトを厳密に再現する必要がある場合は、一度仮想デスクトップで確認作業を行うフローを取り入れることを推奨します。
本コラムでは、Chromebook を法人デバイスとして導入する際に避けて通れない Microsoft 365 の利用方法について、3つの選択肢と、IT管理者が必ず確認すべき重要事項を解説しました。
Chromebook は、軽量性や高速性、管理の容易さから、現代のクラウドベースの働き方に最適なデバイスです。Microsoft 製品の豊富な機能・互換性の高さを組み合わせて、効率的で安全な業務環境を構築しましょう。
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