法人がプロバイダーを選ぶときに注意すべきこと|実はプロバイダーには個人向けと法人向けの違いはない?

会社のインターネットが遅くて、どうにかしたいと思っている方はたくさんいると思います。そんなとき、どこのプロバイダーにすればいいのか、迷ってしまうという方がほとんどではないでしょうか。
プロバイダーサービスを提供している会社はたくさんあり、その中には個人向けと法人向けがあります。それぞれどういう特徴があり、何が違うのか、ちょっと調べただけではわからないと思います。この記事では、法人がインターネット回線やプロバイダーを選ぶときに注意したいポイントをご紹介します。
そもそもプロバイダーとは何か
インターネット接続サービス/またはそれを提供する事業者
プロバイダーとは、インターネットサービスプロバイダー(ISP:Internet Service Provider)の略で、インターネットに接続するためのサービスを提供する事業者のことです。近年はプロバイダーが提供するインターネット接続サービス自体も“プロバイダー”と呼ばれるため、事業者とサービス双方を意味する言葉になっています。インターネット回線関連の話題における「プロバイダー」「インターネットサービスプロバイダー」「ISP」は、ほとんど同じ意味と捉えて良いでしょう。
ちなみに、プロバイダーにはモバイルサービス(及びその事業者)も含まれますが、一般的には固定回線と接続する事業者・サービスを指すことが多いです。本記事でも、固定回線について取り上げています。
インターネットを利用するためには、このプロバイダーとアクセス回線(=物理的な回線)の両方を契約する必要があります。一方で、後述する「独自回線」はプロバイダーと回線事業者が一緒(=プロバイダー一体型)だったり、「光コラボレーション」ではプロバイダーとアクセス回線が基本セットで販売(=バンドル型)されていたりします。特に個人ユーザーにとっては、プロバイダーとアクセス回線が本来は分かれているということを意識する機会は少ないかもしれません。
プロバイダーを自由に選べるのはフレッツ回線のみ
回線にはいくつかの種類がありますが、実はプロバイダーを自由に選べるのはフレッツ回線に限られています。フレッツ回線ではない場合は、プロバイダーのみ別の事業者にしたり、切り替えたりすることは原則できません。
通信が遅くて困っている場合は、まずプロバイダーの切り替えが可能なアクセス回線を使っているかどうかを確認しましょう。
プロバイダーのみの切り替えが可能 | フレッツ回線 |
|
---|---|---|
光コラボレーション |
| |
プロバイダーと一体になっている | ダークファイバー系回線 |
|
電力系回線 |
| |
CATV回線 |
|

通信品質はプロバイダーに左右される?
プロバイダーだけを変えても改善しない可能性もある
多くの方にとって、通信が遅いときにまず思いつくのは「プロバイダーの切り替え」でしょう。
しかし、実は速度遅延の原因はフレッツ回線にあることが多かったりします。
ここ数年、フレッツ光には輻輳(ふくそう)という問題が起き続けています。これはフレッツ回線と各プロバイダーを接続する設備(網終端装置)が混雑してしまう現象で、輻輳が起きている設備につながっている回線のユーザーは、どんなプロバイダーでも通信が遅くなってしまうのです。
根本的に遅延を解決したい場合は、後述するIPoE対応プロバイダーに切り替えるか、アクセス回線ごと独自回線(ダークファイバー系や電力系)に切り替えてしまう方が期待値が高いかもしれません。

IPoE対応プロバイダーなら改善する可能性あり
フレッツ回線を利用してインターネットに接続する場合、その接続方式には「PPPoE」と「IPoE」という2つの選択肢があります。
PPPoE | IPoE | |
---|---|---|
接続方式の世代 | 従来の接続方式 | 次世代の接続方式 |
通信経路 | 網終端装置を経由する | 網終端装置を経由しない |
対応するIPアドレス | IPv4とIPv6に対応 | IPv6のみに対応 |
通信品質 | 通信が遅延しやすい | 通信が速く安定しやすい |
表のとおり、IPoEは前述した輻輳の原因である網終端装置を経由しないため、フレッツ回線起因の遅延を軽減することができます。新たにフレッツ光を導入する場合、あるいはPPPoE方式のプロバイダーを利用している場合は、IPoE対応プロバイダーを契約することである程度快適な通信が期待できます。
PPPoEとIPoEについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

法人向けプロバイダーとは?
実は、個人向けのプロバイダーサービスと法人向けのプロバイダーサービスでは、多くの場合、通信品質面での差はありません。もちろん細かいサービス仕様で違いはありますが、あくまで事業者側のマーケティング戦略として「個人向け」「法人向け」と謳っていることがほとんどだったりします。
とはいえ、なかには通信品質面でも個人向けと差別化を図っているプロバイダーも存在します。例えば、サービス提供範囲を法人に限定することでトラフィックを抑えたり、特定のクラウドサービスの通信を分離する仕組みをつくったりなどです。法人向けのプロバイダーを探す際には、そういった仕組みがあるかどうかを確認してみると良いでしょう。
法人向けサービスを利用するメリット
通信品質面で個人向けサービスと差がなかったとしても、企業や団体が法人向けのプロバイダーサービスを契約するメリットはいくつかあります。
- 法人名義の請求書を発行してもらえる
- 営業担当が就いてくれる可能性がある
- 固定IPアドレスを複数取得できる
法人名義の請求書を発行してもらえる
個人向けサービスであればクレジットカードや口座引き落としでの支払いが一般的ですが、法人の場合は請求書支払いを希望する場合も多いと思います。法人向けサービスであれば法人名義の請求書を発行をしてもらえることが多く、会計処理に困りません。
営業担当が就いてくれる可能性がある
最近では個人向けサービスでもサポートは充実していますが、あくまで家庭レベルでの利用を想定したものがほとんどです。
企業・団体における通信環境は、ルーターやスイッチ、アクセスポイントなどのネットワーク機器も多く、複雑になりがちです。拠点間通信やアクセス制御などのセキュリティも含めると考慮すべきことは多岐にわたるため、個人向けサービスのサポートでは対応できない可能性が高いです。
一方法人向けサービスの場合、法人のネットワークに知見のある営業担当が就いてくれることもあります。場合によっては通信環境をより良くする提案や、セキュリティ面のアドバイスをしてくれるかもしれません。カジュアルに相談できる相手がいるというのは、大きなメリットになるでしょう。
固定IPアドレスを複数取得できる
固定IPアドレスとは?
IPアドレスとはインターネット上の住所を示す情報です。インターネット通信を行う際には必須なものですが、一般的なWeb閲覧を行うだけであれば、そのアドレスは接続の度に変わっても問題なかったりします。このように可変のIPアドレスを「動的IPアドレス」といいます。
一方、企業や団体の場合、外部にサーバーを公開したり、拠点同士を接続したり、リモートで社内ネットワークにアクセスしたりといったことが考えられます。
例として、社内にWebサーバーがあり、外部にWebサイトを公開している場合を考えます。そのWebサイトを閲覧するユーザーは、インターネット上の住所であるIPアドレスを目掛けてやってくるのですが、そのIPアドレスが頻繁に変わってしまうとどこに行ったら良いか分からなくなってしまいます。そこで、常にIPアドレスを固定してあげることで、ユーザーは迷わずそのWebサイトにたどり着けるようになるのです。これが「固定IPアドレス」です。
固定IPアドレスは、拠点間接続やリモートVPNでも有用です。

個人向けプロバイダーの多くは固定IPアドレスを提供していない
個人ユーザーにおけるインターネットの利用用途のほとんどは、一般的なWeb閲覧(検索やSNS、動画視聴など)です。そのため、固定IPアドレスのニーズは少なく、個人向けプロバイダーではそもそも提供していなことが多いです。
一方、法人向けプロバイダーの多くは固定IPアドレスのメニューが豊富で、複数取得も可能です。少なくとも1個、多いと256個の固定IPアドレスを契約できるプロバイダーも存在します。
外部に公開しているサーバーが多かったり、複雑なネットワークを構築している企業・団体にとってはメリットになります。
USEN GATE 02 の法人向けプロバイダーサービス
「情シスマン」を運営するUSEN ICT Solutionsは「USEN GATE 02」という法人向けICTソリューションを提供しており、「フレッツ・アクセス IPoE」という法人向けプロバイダーサービスもラインアップしています。「フレッツ・アクセス IPoE」は法人専用のバックボーンをご用意しているほか、Widows Update 用にさらに専用の通り道を設けているなどの特徴があります。また、固定IPアドレスも複数取得可能です。
詳細は以下のリンクをご覧ください。

法人向けサービスを利用するデメリット・注意点
法人向けのプロバイダーサービスを利用する際には、いくつかのデメリット・注意点もあります。
- キャッシュバックなどのキャンペーンが少ない
- 契約手続きに多少手間がかかる
キャッシュバックなどのキャンペーンが少ない
法人向けサービスは、キャッシュバックなどのキャンペーンが少ないです。
個人ユーザーの場合、キャッシュバックはユーザー自身が得ることができます。一方で、法人ユーザーの場合は契約時に決済が下りているはずなので、キャッシュバックがあったとしても会社の利益になることはなく、契約担当者の懐に入れるわけにもいきません。
そのため、キャッシュバックがメリットになることが少なく、キャンペーンを行っているプロバイダーもあまりありません。
契約手続きに多少手間がかかる
法人契約においては、登記簿謄本や印鑑証明書などの書類が必要となるケースがほとんどです。切り替えや開通を急いでいる場合には、少し煩わしく感じてしまうかもしれません。
「独自回線に切り替える」という選択肢
法人でインターネット回線を導入したい、あるいは回線を切り替えたい場合は、「独自回線」を検討してみるのもおすすめです。
独自回線とは「ダークファイバー系回線」や「電力系回線」を指しますが、これらはフレッツ回線とは全く異なる設備を利用しています。輻輳の原因である網終端装置を経由しないことなどから、快適な通信が期待できます。
アクセス回線ごと切り替えるため工事が必須になりますが、「プロバイダーをいくつか切り替えてみたけど変わらなかった」という方にとっては有効な選択肢になるでしょう。
まずは「フレッツ光+IPoE対応のプロバイダー」から始めてみるのも良いですが、ぜひ独自回線もチェックしてみてください。

法人におすすめしたい「USEN GATE 02 プレミアインターネット」
「情シスマン」を運営するUSEN ICT Solutionsは、「USEN GATE 02 プレミアインターネット」という独自回線も提供しています。
USEN GATE 02 プレミアインターネットは、ダークファイバーを利用した独自回線であることに加え、「専有型」のインターネット回線サービスです。
一般的なインターネット回線サービスは、最寄りの局舎からユーザー宅内の間で分岐をしており、1本の光ファイバーを複数ユーザーで共有しています(=「共有型」)。一方で、USEN GATE 02 プレミアインターネットは、局舎からユーザー宅内までを分岐させず、1本の光ファイバーをダイレクトに提供します。そのため、近隣ユーザーの影響を受けづらく、安定した高速通信が期待できます。
法人向けのプロバイダーやインターネット回線をお探しの方は、「独自回線」「専有型」の USEN GATE 02 プレミアインターネットをおすすめします。

法人におすすめなインターネット回線についてご理解いただけましたでしょうか?プロバイダーを変更するだけでは速度が改善しない可能性が高いことは、サービス選定をする上で、非常に重要なポイントです。
みなさんの会社にとって快適な通信環境の実現に少しでも助けになれば幸いです。