Webフィルタリングとは?仕組み・メリット・デメリットを徹底解説
.png)
現代のビジネスにおいて、インターネットは私たちの業務に不可欠なツールとなっています。しかし、その利便性の裏側には、有害なコンテンツやサイバー攻撃といった数々のリスクが潜んでいます。
社員のWeb閲覧を全面的に禁止するのは非現実的ですが、制限を設けずに放置するのも、企業にとって重大なリスクとなります。このような課題に対応し、安全かつ生産的なオンライン環境を構築するための手段が「Webフィルタリング」です。
本コラムでは、Webフィルタリングの基本的な仕組みから、導入のメリット・デメリット、運用を成功させるための重要なポイントまでを分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
<この記事でわかること>
- Webフィルタリングとは何か
- Webフィルタリング導入のメリットとデメリット
- Webフィルタリング導入のポイント
Webフィルタリングとは?
Webフィルタリングとは、インターネット上の特定のコンテンツやWebサイトへのアクセスを制限する技術やシステムです。主に企業や団体で導入され、従業員がアクセスできるWebサイトを制限したり、特定のサイトへのアクセスを許可またはブロックしたりする目的で使用されます。
コーヒーを抽出する際にフィルターで余分な成分を除去するのと同じように、Webフィルタリングはネット上の膨大なWebサイトの中から、企業にとって危険または望ましくないサイトを自動で取り除く役割を果たします。

Webフィルタリングの4つの手法|仕組みと選択のポイント
Webフィルタリングには、以下4つの種類が存在します。どのような手法でフィルタリングを実施するのか、それぞれ詳細に確認していきましょう。
- URLフィルタリング
- コンテンツフィルタリング
- カテゴリフィルタリング
- レイティング方式
URLフィルタリング
URLフィルタリングは、特定のWebサイトのアドレス(URL)を指定してアクセスを管理する最も基本的な手法です。管理者が事前に「アクセスを認可するサイト」または「アクセスを禁止するサイト」のURLリストを作成し、社員がそれらのサイトにアクセスを試みた時に認可または阻止を実行します。主に以下2つの方式があります。
- ブラックリスト方式
- ホワイトリスト方式
ブラックリスト方式
アクセスを禁止するサイトのリストを作成し、それ以外のサイトには自由にアクセスを可能にする手法です。基本的にはインターネットの利用を自由にしながら、明確に有害または問題のあるサイトのみを阻止したい場合に最適で、設定や管理が比較的容易です。
しかし、新たに発見された有害サイトを順次リストに追加する必要があり、リストに登録されていない危険なサイトには対応できないという課題があります。
ホワイトリスト方式
アクセスを認可するサイトのリストを作成し、それ以外のサイトにはすべてアクセスを禁止する手法です。セキュリティレベルが最も高く、業務に必要なサイトのみに確実にアクセスを制限できるため、金融機関や政府機関など、極めて高いセキュリティが要求される組織でよく採用されています。
ただし、アクセスを許可するリストのメンテナンスが煩雑になり、業務効率が低下する可能性があるという課題もあります。
コンテンツフィルタリング
コンテンツフィルタリングは、Webページの内容を実際に解析し、問題のあるキーワードや画像が含まれているかを判断してアクセスを管理する手法です。たとえば、以下のようなコンテンツを自動で検出し、アクセスを阻止できます。
- 暴力的な表現
- アダルトコンテンツ
- ギャンブル関連
コンテンツフィルタリング方式の優れている点は、URLを事前に登録していない新しいサイトでも、内容に基づいて適切な判断ができる点です。また、同じサイト内でも、ページごとに異なる判断ができるため、より細かな制御ができます。ただし、コンテンツの解析には時間がかかるため、表示速度がやや遅くなる場合があります。
カテゴリフィルタリング
カテゴリフィルタリングは、Webサイトを「ビジネス」「ニュース」「エンターテイメント」「ソーシャルメディア」などのカテゴリに分類し、カテゴリ単位でアクセス管理をする手法です。多くのWebフィルタリングサービスでは、専門機関が数億のWebサイトを事前に解析・分類したデータベース(リスト)を提供しており、管理者は必要なカテゴリを選択するだけで簡単に設定できます。
たとえば、「ビジネス関連サイトは認可、エンターテイメント関連サイトは禁止」といった大まかな管理が可能です。管理が簡単で、新しいサイトも自動的に分類されるため、運用負荷が軽いという特徴があります。
ただし、Webサイトをカテゴリに登録するデータベースが正しく作られていないと、誤って阻止されてしまう点には注意が必要です。
レイティング方式
レイティング方式は、あらかじめ定められた基準に基づいてWebサイトを格付けし、そのレイティング値を利用して、一定の格付けを下回るサイトへのアクセスを遮断するWebフィルタリングの手法です。格付けの方法には、Webサイトの管理者自身が行う「セルフレイティング」と、第三者機関が行う「第三者レイティング」の2種類があります。
Webフィルタリングにこの方式を採用する際は、客観的なレイティング結果が確認できる第三者機関による格付けを参照することが安全とされています。ただし、第三者機関による評価は、新しいWebサイトの評価やレイティングに時間がかかるというデメリットもあります。
Webフィルタリングの導入メリット
Webフィルタリングは企業のセキュリティに欠かせないものになっています。その理由を、以下3つに分けて解説します。
- セキュリティの強化
- 業務生産性向上
- コンプライアンス遵守とリスク管理(内部統制)
セキュリティの強化
サイバー攻撃の多くが悪意のあるWebサイトを介して行われるため、Webフィルタリングはマルウェアやフィッシングサイトなどの危険なサイトへのアクセスを未然に防ぎ、感染リスクを軽減します。アンチウイルスソフトだけでは防ぎきれないWebサイト閲覧による脅威に対し、Webフィルタリングは重要な役割を果たします。
また、情報漏えい対策としても有効です。フィッシングサイトや標的型攻撃における「出口対策」(外部の悪意あるサーバーへの通信遮断)として機能し、機密情報の不正な送信を防ぐのに役立ちます。


業務生産性向上
SNSや動画ストリーミング、ゲームサイトなど、業務と無関係なWebサイトへのアクセスを制限することで、従業員が本来のコア業務に集中できる環境を提供し、時間の浪費を防ぎます。
また、トラフィックの多いWebサービスの利用を制限することで、無駄な通信トラフィックを削減し、ネットワーク帯域を業務に必要な通信に優先的に割り当てられ、バンド幅の最適化にも貢献します。

コンプライアンス遵守とリスク管理(内部統制)
Webフィルタリングは、法令遵守や企業の社会的責任を果たす上で重要な役割を果たします。著作権侵害やハラスメント・コンプライアンス違反につながりかねない不適切な情報の閲覧を制限することは、企業のブランドイメージ毀損リスクの低減につながります。
Webフィルタリング導入時に考慮すべきデメリット
Webフィルタリングは大きな導入効果がありますが、導入方法や運用方法を誤ると、業務効率の低下や社員の不満を招く結果にもなりかねません。
誤検知のリスク
Webフィルタリングは自動的にサイトの内容を判断するため、業務に必要なWebサイトやコンテンツが誤ってブロックされてしまう「誤検知」が発生するリスクがあります。誤検知が頻繁に発生すると、社員が業務に必要な情報にアクセスできなくなり、作業効率が低下し、業務に支障が出ることもあります。
柔軟な設定ができない可能性と業務効率の低下
Webフィルタリング設定が厳しすぎると、生産性が低下する可能性があります。Webフィルタリングの種類によっては、各部署のニーズに合わせたきめ細やかな設定ができない場合があり、その結果、部署ごとにアクセス権限を変えたいという要望に対応できず、業務に必要なサイトへのアクセスが妨げられるリスクがあります。必要以上に多くのサイトがブロックされると、業務効率が低下し、従業員のストレス増加や士気の低下につながる恐れがあります。
Webフィルタリング導入・運用のための成功戦略
Webフィルタリングの効果を最大限に引き出し、業務効率の低下や従業員の不満を招くことなく運用するためには、戦略的な運用計画が必要となります。
業務効率とセキュリティのバランスを取る
Webフィルタリングを効果的に運用するためには、不正サイトや悪質なページを確実にブロックしつつ、業務上必要なWebサイトにはスムーズにアクセスできる状態を保つことが重要です。セキュリティを確保しつつ業務効率を維持するためには、制限レベルの設定において慎重なバランスが求められます。
制限範囲の最適化と柔軟な設定
Webフィルタリングの設定においては、最初から完璧を目指すのではなく、段階的に制限レベルを調整し、従業員からのフィードバックに基づいて最適な設定を見つけることが重要です。また、各部署や職種の業務内容を詳細に分析し、それぞれに適したアクセス権限を設定する必要があります。
たとえば、マーケティング部門ではSNSや競合他社のサイト調査が業務に含まれることがあるため、部門や職種によっては業務遂行に必要なアクセスも存在します。そのため、一律に制限をかける際には慎重な検討が求められます。部署ごとや役職ごとに異なる設定を適用することで、業務効率を維持しつつ、セキュリティを確保することができます。
例外運用の規定の策定
業務上やむを得ない理由でアクセス制限の例外対応が必要になる場合に備えて、事前に明確な規定を策定しておくのも大切です。例外申請の手順や承認権限者、申請理由の審査基準、一時的な許可の期間、緊急時の対応手順などを詳細に定め、透明で公平な例外運用を作成しておくことが重要です。
従業員のITリテラシー向上を並行して目指す
Webフィルタリングは強力なセキュリティツールですが、従業員のITリテラシー向上も同様に重要です。危険なWebサイトの見分け方や、フィッシング詐欺の手口、安全なインターネット利用法などについて、従業員への定期的な教育・研修を通じて知識レベルの底上げを図る必要があります。
情報セキュリティ動画教材の視聴や、フィッシング詐欺メールを模した訓練メール(標的型攻撃メール訓練)の配信は、効果的な教育ツールです。
Webフィルタリングの目的は従業員の「監視」ではなく、組織全体のセキュリティ確保と従業員自身を危険から守ることにある点を明確に伝え、その理解を促すことが、ツールの効果的な運用と従業員の意識改革に繋がります。

運用ルールの明確化と貸与デバイスへの対策
システムの長期的な運用を見据え、監視担当者やトラブル対応責任者を事前に指定し、問題発生時の連絡体制を構築するなど、導入後の運用体制を整備することが重要です。
また、テレワーク時に貸与されたデバイスが不用意に使用されると、マルウェア感染や情報漏えいのリスクが高まります。そのため、Webフィルタリングと併せて、アプリケーションのインストールやドメインアクセスを制御するシステム制御を導入し、リスクを最小限に抑えることが望ましいでしょう。

Webフィルタリングは、インターネットの利便性を活かしつつリスクを抑える重要なツールであり、企業において適切に導入することで、サイバー攻撃からの防御や業務効率の向上、情報漏えいのリスクを減らし、生産性向上や安全なオンライン環境を実現します。
社員の業務内容を十分に考慮した柔軟な設定と、ITリテラシー向上を組み合わせることで、Webフィルタリングの効果を最大化し、競争力の高い安全な職場環境を構築しましょう。
情シスマンを運営するUSEN ICT Solutionsは、Webフィルタリング機能を搭載した「セキュアWEBゲートウェイサービス」をはじめ、幅広いセキュリティサービスを提供しています。「自社のセキュリティ対策に不安がある」「導入コストや運用体制を相談したい」といった方は、ぜひお気軽にご相談ください。

