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column_2212025.08.04

DXの失敗事例7選 | 失敗した原因とそこから学ぶ成功のポイントをわかりやすく解説

著者:情シスマン
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「うちもDXを推進したいが、失敗しないか心配」
「DXの失敗例を参考にしてDXに取り組みたい」

このような課題意識を持つ企業・担当者は多くいます。多くの企業が競争力強化や業務効率化を目的としてDXを推進していますが、必ずしも成功しているわけではありません。実際、計画が途中で頓挫したり、期待した成果が得られなかったりと、失敗に終わるケースも少なくありません。

本記事では、DXに失敗した7つの事例を取り上げ、その背景にある共通点や課題から成功ポイントを詳しく解説します。ぜひご参考にしてください。

<この記事でわかる内容>

  • DXで失敗した事例
  • DXの失敗要因
  • DX成功のポイント
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事例1.【大手食品メーカー】基幹システム刷新による混乱

ある大手食品メーカーは、レガシーな基幹システムの移行プロジェクトを実施しました。このプロジェクトは、全社的な業務統合や業務効率化、サプライチェーンの可視化を目的としていましたが、稼働直後から受注や出荷に深刻な支障が生じ、最終的には出荷停止に至りました。この問題は、取引先や消費者に広範な影響を与え、結果として業績悪化とブランドイメージの低下を招きました。

失敗の要因 | 大規模一斉切り替えと現場との乖離

この失敗の要因は、「新システムへの大規模な一斉切り替え」であったと考えられます。トラブル発生時のリカバリー手段が不足していたため、全社的な業務停滞を招いた可能性が高いです。また、現場の業務内容がシステム設計に十分に反映されていなかった点は、混乱をさらに深める原因となりました。これらの計画面や導入方法の課題が、結果として大規模なトラブルにつながったと言えるでしょう。

システムを段階的に導入し、小規模な範囲で検証を重ねることで、大規模な混乱を避けられた可能性が考えられます。また、事前に現場の業務フローを詳細に洗い出し、それを設計に反映することで、運用開始後の予期せぬトラブルを削減できたでしょう。

事例2.【大手金融機関】大規模システム障害

ある大手金融機関では、定期預金の大量データ移行と月末処理が重なったことで、全国のATMが停止するという大規模なシステム障害が発生しました。この障害により、多くの顧客の通帳やカードがATMに取り込まれたまま操作不能になり、店舗窓口やオンラインバンキングにも影響が及びました。

この事態を受けてシステムを刷新しましたが、その後も複数回にわたり障害が発生しました。度重なるシステム障害により、顧客のシステム安定性への信頼は大きく損なわれ、企業としての信用に甚大なダメージを与えました。

失敗の要因 | 複雑化したレガシーシステムと経営層のIT軽視

度重なるシステム障害の主な原因は、長年にわたり引き継がれてきたレガシーシステムの存在にあると考えられます。複数の旧システムが複雑に絡み合い、相互依存性が高まった結果、システム全体の構造が極めて複雑化していました。これにより、個々の処理がシステム全体に与える影響を正確に予測することが困難になり、処理の集中やスケジューリングの誤りがシステム全体の障害を引き起こすリスクを内包していました。

また、経営陣のITに対する理解不足や軽視も度重なるシステム障害の要因として挙げられています。システム刷新後の障害の背景には、技術的な問題だけでなく、情報システムへの理解が不十分なままプロジェクトを現場任せにし、必要な資金や人員の投入といった重要な経営判断が下されなかったことが根本的な原因として考えられます。

これらのことから、単にシステムを新しくするだけでは問題は解決しないことが強く示唆されます。技術的な側面の改善に加え、経営層のITに対する意識改革と組織文化の変革こそが、再発防止の鍵であると言えるでしょう。

事例3.【大手旅行会社】バーチャル観光事業の中止

ある大手旅行会社は、コロナ禍で観光業界が深刻な打撃を受ける中、新たな収益源を確保するためにバーチャル観光事業に注力しました。最先端の映像技術やオンライン配信を活用し、自宅にいながら世界旅行できるサービスを提供することで、旅行需要の代替となることを期待していました。当初は話題性もあり一定の関心を集めたものの、事業全体としては収益に結びつかず、短期間で縮小・終了に至りました。

失敗の要因 | 目的と手段の混合

この取り組みでは、最新技術の活用が目的となり、顧客の真のニーズや課題の深掘りが不十分であったと考えられます。その結果、利用者にとって価値ある体験やサービスの提供には至らず、事業としての持続性を欠く形になりました。DXはあくまで課題解決のための手段であり、技術先行ではなく、まず顧客視点から課題を明確にし、それに対する最適な解決策として技術を選択すべきだったといえるでしょう。

事例4.【米国大手自動車メーカー】デジタル部門の孤立と組織の分断

ある米国大手自動車メーカーでは、デジタル領域に特化した独立組織を設け、従来の車両開発部門とは別に俊敏かつ先進的な取り組みを進めようとしました。技術志向のチームとして期待される一方、既存組織との接点や情報共有が限定的であったため、新しい技術やサービスが本体のプロセスやビジネス戦略に結びつかず、社内調整や戦略整合の齟齬が徐々に顕在化しました。

その結果、デジタル部門が生み出した新たなサービスや技術は、既存の製品開発や販売プロセスで十分に活用されませんでした。これにより、リソースの重複と戦略の分断が生じ、全社的なDX推進が足踏みする状況となってしまいました。

失敗の要因 | 連携不足が招いた分断

新設組織が迅速な意思決定を重視した一方で、既存部門との連携が不十分であったため、組織間の分断を招いた可能性があります。これにより、革新的なアイデアや技術が既存の製品・サービスに統合される機会が失われ、期待された相乗効果も得られませんでした。このような組織の孤立は、全社的な知識共有や戦略調整の不足につながり、DX推進を妨げる要因となったと考えられます。

デジタル部門を完全に孤立させるのではなく、既存部門との橋渡しにとなる人材や仕組みを設け、全社的なビジョンの共有を図ることが必要であったといえるでしょう。

事例5.【米国大手製造業企業】デジタル事業への過剰投資

ある米国大手製造業は、デジタル企業への変革を掲げ、自社の産業データを活用したIoTプラットフォーム開発に巨額の投資を行いました。このプラットフォームは、航空・製薬・電力・鉱業・製造・石油・ガスといった様々な業界の産業機器からデータを収集・分析し、コスト削減や生産性向上に貢献することを目指していました。

しかし、開発の遅延や既存システムとの連携の難しさから、プラットフォームの社内外での利用は伸び悩みました。結果として、事業規模は当初目標の10分の1にも満たず、デジタル部門は分社化、規模縮小を余儀なくされました。

失敗の要因 | 急ぎすぎた外部展開と実証不足

先進的な投資を行ったものの、社外展開を急ぐあまり自社での実証実験が不十分となり、結果として現場のニーズに合致しないまま改善が進まなかったと考えられます。さらに、既存システムとの連携も難航したため、多額の投資にもかかわらず、期待された社内外の需要を満たすことはできませんでした。デジタル投資においては、段階的な実行と、既存事業との連携が不可欠であるといえるでしょう。

事例6.【製造業企業】大型基幹システムの廃棄

ある製造業企業は、老朽化した基幹システムを刷新するため、数十億円を投じて大手ベンダーの基幹パッケージを全面的に導入するプロジェクトを進めていました。業務プロセスの標準化と全社横断的なデータ活用を目標としていましたが、導入からわずか2年でプロジェクトは凍結され、最終的にシステムは全廃されることになりました。

失敗の要因 | システム先行と業務プロセスの乖離

失敗の主な要因は、システムありきで業務プロセスを変更しようとした点にあると考えられています。導入された新しいパッケージシステムは現場従業員のニーズを満たせず、機能的な乖離が生じました。その結果、過剰なカスタマイズが必要となり、開発負荷が急増しました。これにより、プロジェクトコストが大幅に増加しただけでなく、標準機能からの大幅な逸脱により、運用面での柔軟性も損なわれました。

このような事態を避けるためには、事前に業務プロセスを可視化したうえで、導入製品がどこまで自社にフィットするかを検証するプロセスが不可欠です。さらに、段階的な導入や業務領域ごとの分割実装も有効なアプローチといえるでしょう。

事例7.【仏壇仏具販売企業】コロナ禍による開発中断

ある仏壇仏具販売企業は、2019年に業務効率化と将来的な拡張性を見込み、基幹システムの開発に着手しました。しかし、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大により、外部パートナーとの連携や開発体制の維持が困難となり、2021年3月にプロジェクトの中止を決定し、多大な経済損失を計上しました。

失敗の要因 | BCP対策不足と外部環境変化への脆弱性

この事例におけるプロジェクト中止の一因として、パンデミックのような外部環境の急激な変化に対するBCP(事業継続計画)対策の不十分さが挙げられます。コロナ禍でリモートワークへの移行が加速する中、開発体制や要件定義プロセスのオンライン化が整っておらず、開発継続のための代替策やフェーズ分割といった計画が不足していた可能性が考えられます。結果として、感染拡大への対応が困難となり、開発再開の目途が立たず、プロジェクトを断念せざるを得ませんでした。

緊急事態を想定したBCP対策が事前に講じられていれば、段階的な移行計画やクラウド環境での開発推進といった柔軟な対応が可能となり、予期せぬ中断リスクを軽減できたと考えられます。特にクラウド基盤を活用することで、場所にとらわれずにプロジェクトを継続できる環境を整備できたでしょう。

失敗事例から学ぶ!DX成功のポイント

これまでの複数の失敗事例を総合的に見ると、DXが失敗に至る背景には、以下のような課題が浮かび上がります。

  • 戦略と現場の乖離
  • 大規模一括導入のリスク
  • 組織間の連携不足と孤立化
  • 技術導入の目的と顧客価値のズレ
  • レガシーシステムと複雑な運用環境の壁
  • リスクマネジメントとBCP(事業継続計画)の不備

ここでは、これらの課題を踏まえ、DXを成功に導くためのポイントをご紹介します。

現場との密な連携

DXを成功させるためには、経営層のビジョンと現場の実情を連携させることが不可欠です。両者の乖離は、システムの形骸化を招く恐れがあります。

現場の業務ニーズや課題を深く理解し、その意見をシステム設計や導入に反映させるためのコミュニケーション体制を構築することが重要です。これにより、現場に即した実用的なDXが実現し、定着が促進されます。

段階的な導入とリスクの管理

新たなシステムやデジタルサービスを全社一括導入する際、準備や従業員への教育が不足していると、業務の混乱やサービス停止といった重大なリスクが発生する可能性が高まります。また、全社一括の切り替えは、問題が発生した際に影響範囲が甚大になる傾向があります。

このようなリスクを軽減し、成功へと導くには段階的な導入が有効です。一部部門での試験運用を行い、そこで得られたフィードバックを基に改善を重ねることで、問題点を早期に発見・対処し、スムーズな全社展開へとつなげられます。

組織横断的な連携と協働

DX成功のためには部門間の連携が不可欠です。DX推進部門やデジタル専門チームが他部署と十分に連携できない場合、情報共有や意思決定の遅延が発生し、全社的な取り組みとして機能不全に陥る可能性があります。

部門間の壁を取り払い、組織横断的な連携体制を構築し、コミュニケーションを促進することが求められます。部署間の協働は、現場の課題やニーズを正確に把握し、DX推進の原動力となります。

顧客価値を起点とした技術活用

最新技術の導入そのものが目的となってしまい、顧客課題の解決やビジネスにおける価値創出がおろそかになるケースが見受けられます。DX成功のためには、単に技術を導入するのではなく、顧客や市場のニーズを起点とした戦略設計から始めることが重要です。

技術の選択や投資はあくまでも手段であり、どのような顧客価値を生み出し、どのようなビジネス課題を解決するのかを明確にすることが、投資対効果の向上とプロジェクトの成功に繋がります。

レガシーシステム克服と柔軟なIT環境

多くの企業が抱える長年利用してきたレガシーシステムは、新しいデジタル技術を導入する際の大きな障壁となりがちです。複雑に絡み合った既存システムとの連携には膨大な時間とコストがかかり、これがDX推進の遅延や失敗につながるケースも少なくありません。

DXを成功させるためには、現在のシステムと業務の全体像を正確に把握し、段階的な見直しと改善を進めることが不可欠です。将来の変化に対応できるよう、柔軟なシステム設計、特にクラウドへの移行も視野に入れた環境整備がDX成功の強固な土台となります。

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リスクマネジメントとBCP(事業継続計画)の確立

パンデミックのような不測の事態への備えがなければ、開発や運用が中断し、プロジェクトが頓挫するリスクが高まります。リモートワーク体制や非常時の対応フローが未整備の場合、急激な環境変化への柔軟な対応は困難です。

DXを継続的に推進するためには、BCP(事業継続計画)の策定が不可欠です。クラウド環境の活用、リモートワーク体制の強化、代替策の準備などを進めることで、予期せぬトラブルにも強い体制を構築し、持続的なDXを可能にします。

まとめ

DXは単なる「IT導入」ではなく、企業文化や業務プロセス、組織体制の変革を伴う取り組みです。その本質を理解し、段階的かつ柔軟に進めていくことが、成功への近道です。失敗事例から学ぶことで、同じ轍を踏まず、持続的な変革を実現していきましょう。

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