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column_2832026.09.02

Azure VPN Gateway の非 AZ SKU・Basic パブリックIPアドレス廃止と、今すぐ対応すべき移行手順まとめ

著者:情シスマン
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Azure 環境の要として広く利用されている「Azure VPN Gateway」ですが、現在、大規模なポートフォリオの簡素化(SKUの統合)が進んでいます。これに伴い、従来の「Basic パブリック IP アドレス」、および「非 AZ(可用性ゾーン非対応)SKU」の廃止スケジュールが同時に進行しています。

本コラムでは、これら2つの廃止について、それぞれの理由、最新のタイムライン、具体的な移行方法と放置するリスクを完全に整理して解説します。

Basic パブリックIPアドレスの廃止と Standard パブリックIPアドレスへの移行

まずは、ネットワークの入口となる「パブリックIPアドレス」の Basic SKU 廃止について解説します。

Basic パブリックIPアドレスはなぜ廃止される?Standard パブリックIP アドレスとの違いは?

Basic SKU が廃止される最大の理由は、「セキュリティの強化(標準で閉じる仕様への変更)」と「最新機能(可用性ゾーン)への対応」です。両者の根本的な違いは、「ファイアウォール(NSG)を設定し忘れたときの安全性の違い」にあります。

旧:Basic パブリックIPアドレスの仕組み

IPアドレスを割り当てた時点で、インターネット側からの通信を受け入れる口が標準で「全開」になる仕様でした。もちろんNSG(ネットワークセキュリティグループ)を後から適用して制限することは可能でしたが、設定を忘れてしまっても外部から接続できてしまうため、設定漏れによるセキュリティ事故のリスクが高い構造でした。

新:Standard パブリックIPアドレスの仕組み

IPアドレスをアタッチしただけでは、インターネットからの全ての通信が標準で「完全ブロック(全拒否)」されます。通信を通すためには、必ず NSG を適用し、「〇〇番ポートだけ許可する」というルールを明示的に作成しなければ通信できません。 これにより、設定ミスによるサーバーの露出を防ぎ、安全なゼロトラスト環境を標準化できるようになりました。

また機能面においても、Basic パブリックIPアドレスは Azure の最新インフラである「可用性ゾーン(複数のデータセンターによる冗長化)」に対応していません。セキュリティ向上と基盤の近代化のために、Basic パブリックIPアドレスの一斉廃止が進められています。

参照:Azure でのパブリック IP アドレス - Azure Virtual Network|Microsoft Learn

Basic パブリックIPアドレス 廃止のタイムライン

Microsoft は、ユーザー環境の突発的な通信遮断を避けるため、以下のステップで段階的な制限と実質的なペナルティを課してきました。

2025年3月31日(実施済)

新しい Basic パブリックIPアドレスのデプロイ(新規作成)が完全に不可能になりました。

2025年9月30日(実施済)

VM や Application Gateway にアタッチされている通常の Basic パブリックIPアドレスが公式にサポート終了(リタイア)しました。

2026年3月31日(実施済)

未移行の Basic パブリックIPアドレスの利用料金が、Standard パブリックIPアドレスと同等に自動値上げされ、コスト的メリットは完全に消失しています。

2026年6月30日(実施済)

VPN Gateway にひもづく Basic パブリックIPアドレスの個別猶予期間が終了しました。

対応しないとどうなる?未対応のリスクは?

「廃止されたなら、Azure 側で自動的に Standard パブリックIPアドレスに切り替えてくれるのでは?」と誤解されがちですが、勝手に全自動で切り替わることはありません。

Basic SKU の VPN Gateway(後述のパターンB)にアタッチされている Basic パブリックIPアドレスに関しては、すでに Azure 内部で Standard パブリックIPアドレス構造への切り替えが完了しているため、通信切断等の重大なリスクはありません(単に不要になった旧IPアドレスリソースの参照がポータル上に残っている状態です)。

一方で、VM などに直接アタッチされている通常の Basic パブリックIPアドレス(後述のパターンA)を放置した場合、全自動で Standard 化されるわけではないため、「サポート切れの危険な状態(Basic パブリックIPアドレス)のまま通信だけがベストエフォートで維持されている」という状態が続きます。これにより、以下の重大なビジネスリスクを抱えることになります。

突発的な停止リスク

今後の互換性テストが行われないため、Azure 側の定期メンテナンスや基盤パッチが適用されたタイミングで、ある日突然通信が切れるリスクがあります。

トラブル時のサポート拒否(SLA対象外)

公式ドキュメントにある通り、SLA(サービスレベル保証)の対象外となります。万が一ネットワーク障害が発生して Microsoft に問い合わせをしても、「サポート終了製品のため対応不可」と回答され、原因究明や復旧支援は一切受けられません。

人為的ミスによる復旧不能リスク

運用中に間違えて一度でもリソースから Basic パブリックIPアドレスを切り離して(デタッチ)しまうと、新規割り当て禁止のルールに引っかかり、二度と元の Basic パブリックIPアドレスを再割り当てできなくなる可能性があります

※ Standard パブリックIPアドレスへアップグレードしてからであれば安全に再アタッチ可能です。

参照:Azure で Basic パブリック IP アドレスを Standard SKU にアップグレードする|Microsoft Learn

Basic パブリックIPアドレスの確認方法と移行手順(対象リソース別)

こうしたリスクを解消するため、対象リソースに応じた適切な手順で Standard パブリックIPアドレスへの移行作業を行います。

事前準備:Basic パブリックIPアドレスを利用しているかの確認

①Azure Portal にアクセスし、検索窓から「パブリックIPアドレス」を開きます。

②現在ご利用中のパブリックIPアドレスが一覧表示されるため、「SKU」項目を確認します。

SKU が「Standard」の場合は最新の SKU を使用できているため、移行対応は不要です。

SKU が「Basic」の場合、以下のパターン別に移行対応を実施してください。

パターンA:Azure VM(仮想マシン)にアタッチされている場合

Basic パブリックIPアドレスを「一度デタッチ」→「静的に変更」→「Standard へアップグレード」→「再アタッチ」の手順を踏むことで、IPアドレスの値(グローバルIPアドレス)そのものを変えることなく、Standard パブリックIPアドレスへ直接移行することが可能です。

移行手順は以下の通りです。

①Azure Portal で対象のパブリックIPリソースを開きます。

②概要画面の[関連付けを解除]を選択し、一度IPアドレスをデタッチします。

③サイドバーから[構成]を開き、割り当てが[動的]になっている場合は[静的]に変更して[保存(適用)]します。

※ Standard パブリックIPアドレスは静的割り当てのみ対応しているため、動的なままではアップグレードが実行できません

④[概要]画面に戻り、上部に表示されるアップグレードのバナーを選択します。

⑤説明事項を確認し、[確認しました]にチェックを入れ、[はい]を選択してアップグレードを実行します。

⑥アップグレード完了後、再び VM のNIC(ネットワークインターフェース)へパブリックIPアドレスを関連づけ(再アタッチ)します。

重要な注意点は以下の通りです。

  • アクセス不可(ダウンタイム)の発生:IPアドレスを切り離して変更・再接続するまでの作業時間(数分程度)は、そのパブリックIPアドレス経由での外部アクセスが一切できなくなります。必ず夜間や休日などの計画メンテナンス枠で実施してください。
  • NSG(事前許可)の確認:Standard パブリックIPアドレスに切り替わった瞬間から「Secure by default(標準拒否)」が適用されるため、事前に NSG(ネットワークセキュリティグループ)でインバウンド許可ルールを作成しておかないと、アタッチ完了後も通信が遮断されます。

参照:パブリック IP アドレスをアップグレードする|Microsoft Learn

パターンB:VPN Gateway(Basic SKU)にひもづいている場合

※ VPN Gateway の SKU が Basic 以外(VpnGw1〜5 など)の場合は、後述の「非 AZ SKU の廃止と AZ SKU への移行」をご確認ください

「Basic SKU」の VPN Gateway については、Azure 側によってバックエンドですでに Standard パブリックIPアドレス構造への切り替えが完了しています。そのため、ユーザー側で複雑な移行作業を行う必要はなく、旧IPアドレスリソースへの「参照(リンク)」を切り離す操作のみで対応が完了します。

移行方法は以下の通りです。

①Azure Portal を開き、[Hybrid connectivity]>[VPN Gateways]の順に開き、Basic パブリックIPアドレスがアタッチされている VPN Gateway を選択します。

②サイドバーから[設定]>[構成]を開き、[Basic パブリックIPの参照の削除]を選択し、[検証]の詳細を表示します。

③全てのリソースの状態が[Succeeded]であることを確認し、下部の[Basic パブリックIPの参照の削除]を選択します。

④削除完了後、以下の画面に変更されていることを確認します。

ダウンタイムはなく、既存の接続は維持されます。処理完了後、不要になった古い Basic パブリックIPアドレスリソースは手動で削除します。

参照:Basic SKU VPN ゲートウェイから Basic SKU パブリック IP リファレンスを削除する - Azure portal|Microsoft Learn

非 AZ SKU の廃止と AZ SKU への移行

VPN Gateway 本体(ゲートウェイ)の「非 AZ SKU」から「AZ 対応 SKU」への統合・移行について解説します。

非 AZ SKUはなぜ廃止される?AZ SKU との違いは?

非 AZ(可用性ゾーン非対応)SKU が廃止される最大の理由は、「Azure 全体のインフラ標準が可用性ゾーン(AZ)ベースへ進化し、接続の信頼性を高めるため」です。両者の根本的な違いは、「データセンター障害に対する強さ(耐障害性)」にあります。

旧:非 AZ SKU(VpnGw1~5 など)の仕組み

単一のデータセンター(特定の建物やラック)に依存して動作していました。そのため、そのデータセンター全体で大規模な電源障害や災害が発生した場合、VPN接続が全断してしまうリスクがありました。

新:AZ 対応 SKU(VpnGw1AZ~5AZ など)の仕組み

同一リージョン内の「物理的に隔離された複数のデータセンター(可用性ゾーン)」に分散して配置(ゾーン冗長配置)されます。仮に1つのデータセンターが完全にダウンしても、別ゾーンのインフラが自動で通信を引き継ぐため、非常に高い信頼性とSLA(99.95%)を維持できます。

参照:ゲートウェイ SKU マッピング - Azure VPN Gateway|Microsoft Learn

移行に伴う「具体的な料金変化」の比較

「AZ 対応の上位 SKU や Standard パブリックIPアドレスへ移行すると、コストが大幅に上がるのでは?」と懸念されがちですが、Microsoft は移行支援のために AZ 対応 SKU の価格引き下げを実施しているため、コスト面への極端な影響はありません。

ただし、実際には本体の月額料金で約2,393円(1ドル=164円換算時。為替や算出基準により変動)の差額が発生します。また、パブリックIPアドレスの Standard 化に伴う差額も月数百円程度プラスされます。

  • 同世代での移行(Gen 1 → Gen 1 AZ):帯域幅などのスペックはそのままで、月額数千円程度の微増により「データセンター障害に耐えられる高い可用性(SLA 99.95%)」を得ることができます。
  • 世代更新を伴う移行(Gen 1 → Gen 2 AZ):移行に合わせて世代(Generation)を Gen 2 へ変更した場合は、処理性能の向上に伴い上限帯域幅が最大2倍(例:VpnGw3 の1.25Gbps → VpnGw3AZ Gen2の2.5Gbps)に拡張されます。

参照(IPアドレスの価格):https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/ip-addresses/
参照(VPN Gateway の価格):https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/vpn-gateway/

非 AZ SKU 廃止のタイムライン

VPN Gateway 本体(VpnGw1〜5)の非 AZ SKU 廃止は、以下のスケジュールで進行しています。

2025年1月1日(実施済)

非 AZ SKU(VpnGw1〜5)の新規ゲートウェイ作成が完全に停止されました。

2025年5月〜(進行中)

手動アップグレードに加え、Microsoft 側によるバックエンドでのシームレスな自動移行プロセス(原則ダウンタイムなし)が開始されています。

2026年9月30日

非 AZ SKU(VpnGw1〜5)が完全に廃止(サポート終了)となります。

※ 非 AZ SKU の完全廃止期限(2026年9月末)まで、残すところあと残りわずかです。

参照:Azure VPN Gatewayの新機能|Microsoft Learn

対応しないとどうなる?(未対応のリスク)

「非 AZ SKU の廃止」と聞くと焦って手動対応しなければいけないように思えますが、実は現在のパブリックIPアドレスの構成によってリスクの大きさが全く異なります。

Standard パブリックIPアドレスを使用している場合

すでに Standard パブリックIPアドレスにひもづいている VPN Gateway であれば、2025年5月より開始されている Microsoft 側のバックエンド処理により、ダウンタイムなしでシームレスに AZ 対応 SKU へ自動移行されます。特段の事情(自社で切り替え日時を管理したいなど)がなければ、自動移行に任せて静観する対応で問題ありません(通信切断も発生しません)。

Basic パブリックIPアドレスが残っている場合

本当のリスクは、VPN Gateway 側に旧型の Basic パブリックIPアドレス(またはその参照)が残っているケースです。この場合、以下の問題が発生します。

  • 自動移行の前提条件を満たせないリスク:AZ 対応 SKU は Standard パブリックIPアドレスが必須となるため、Basic パブリックIPアドレスの参照が残ったままだと、スムーズな自動移行の妨げとなったり、予期せぬ設定不整合を引き起こしたりする可能性があります。(移行にはダウンタイムが発生するため、今後強制自動移行が発生した際に予期せぬダウンタイムが発生する可能性があります。)
  • 不要な旧リソースが残存する:前述の通り、Azure 側で内部的な Standard IP 化が行われていても、Azure Portal 上に不要になった旧 Basic パブリックIPアドレスの参照が残り続けてしまいます。

すでに Standard パブリックIPアドレスをお使いであれば過度に心配する必要はありません。危機感を持って対応すべきなのは、「Basic パブリックIPアドレスの参照がまだ残っている VPN Gateway」です。後述の手順に従い、先に Basic パブリックIPアドレスの参照削除(または Standard 化)および非 AZ SKU の移行を完了させておきましょう。

非 AZ SKU の移行方法(条件別)

現在の VPN Gateway にひもづいているパブリックIPアドレスの SKU(Standard か Basic か)によって、移行手順とダウンタイムの有無が異なります。

パターン1:非 AZ SKU(VpnGw1~5)+「Standard パブリックIPアドレス」を利用している場合

移行手順は以下の通りです。

①Azure Portal で対象の VPN Gateway リソースを開きます。

②サイドバーから[設定]>[構成]を選択します。

③SKU のドロップダウンメニューから、対応する AZ 対応 SKU(例:VpnGw1 から VpnGw1AZ)を選択し、[保存]を実行します。

※ 前述の通り、手動で変更を行わず Microsoft による自動移行をそのまま待つ方法でも問題ありません。

④ダウンタイム:なし。原則として通信断を伴わず、シームレスに切り替わります。

参照:VPN Gateway SKU をアップグレードする - Azure VPN Gateway|Microsoft Learn

パターン2:非 AZ SKU(VpnGw1~5)+「Basic パブリックIPアドレス」を利用している場合

VPN Gateway 本体だけでなく、ひもづいている Basic パブリックIPアドレスを Standard パブリックIPアドレスへ昇格させる処理が必要となります。Microsoft が用意しているポータル上の移行ツールを使用することで、IPアドレスの値(グローバルIPアドレス)を保持したまま移行が可能です。

移行手順は以下の通りです。

①Azure Portal で対象の VPN Gateway リソースを開きます。

②サイドバーの設定メニューから[構成]を開き、[Migrate to Standard IP]タブを選択します。

③[検証]を選択し、環境が移行条件を満たしているか確認します(ステータスが Succeeded になっていれば成功です)。

④[Prepare]を実行します。Azure 内部で Standard IP 構造への事前作成が行われます(約30~45分かかりますが、この間のVPN通信は維持されます)。

⑤準備完了後、[Migrate]を実行して切り替えを行います(このタイミングで最大10分のダウンタイムが発生します)。

⑥移行完了後、内容を確認して[Commit]を実行することで不要になった旧リソースの削除が完了します。

重要な注意点は以下の通りです。

  • ダウンタイム(一時的なVPN切断)の発生:最後の「Migrate」処理を実行したタイミングで、約5〜10分の一時的なVPN切断(ダウンタイム)が発生します。必ず業務に影響のない計画メンテナンス枠(夜間や休日)を確保して実施してください。
  • IPアドレスの値は不変:移行完了後もグローバルIPアドレスの値自体は変わりません。対向(オンプレミス)ルーター側のIPアドレス設定などを変更する必要はありません。

参照:VPN Gateway 用の Standard SKU に Basic SKU パブリック IP アドレスを移行する方法 - Azure VPN Gateway|Microsoft Learn
参照:Basic SKU の Public IP アドレスを使用している Azure VPN Gateway のマイグレーションについて(Basic SKU VPN Gatewayは除く)|Japan Azure IaaS Core Support Blog

まとめ:計画的なメンテナンススケジュールの確保を

Basic パブリックIPアドレスの猶予期間(2026年6月末)はすでに経過しており、現在は「SLA(サービスレベル保証)が効かず、公式サポートも受けられない非常に危険な状態」にあります。さらに、VPN Gateway 本体(非 AZ SKU)の完全廃止(2026 年9月末)も間近に迫っています。

「今すぐ突然通信が遮断される」というわけではありませんが、Azure 基盤の自動アップデートに伴う突発的な通信障害や、いざというときのトラブル対応不可リスクを避けるためにも、放置は禁物です。

特に Basic パブリックIPアドレスが残っている環境については、速やかに夜間・休日などの計画メンテナンス枠を確保し、Standard パブリックIPアドレスへのアップグレード、および AZ 対応 SKU への移行をスケジュールしましょう。

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