Azure Site Recovery とは?メリットや料金、具体的な仕組みを徹底解説
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「BCP(事業継続計画)のために、システムの災害対策をしたいけれど、物理的なDR(ディザスタリカバリ)サイトを構築・運用するのはコストも手間もかかる」
このような悩みを抱える企業は少なくありません。クラウドが普及した現在、この課題を解決するソリューションとして注目されているのが、Microsoft Azure が提供する「Azure Site Recovery」です。
そこで今回は、Azure Site Recovery の基本的な概念から、具体的なメリット、料金体系、さらには構築と復旧の仕組みまでをわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
<この記事を読んで分かること>
- Azure Site Recovery の概要とメリット
- Azure Backup との違いと最適な選び方
- 平常時・有事にかかる料金体系
- データ同期とシステム復旧の具体的な仕組み
※2026年4月時点の情報を掲載しています。
そもそもDR(ディザスタリカバリ)とは?
Azure Site Recovery の機能について詳しく見ていく前に、まずは前提知識として「DR(ディザスタリカバリ)」について確認しておきましょう。
DRとは、自然災害や大規模なシステム障害などにより基幹システムが停止した場合に、事業を中断させないよう、迅速なシステム復旧と事業継続を可能にするための一連の対策です。
DRを実現するための具体的な技術として、主に以下の2つが用いられます。
レプリケーション
レプリケーションとは、メインサイトのデータを、遠隔地などの別サイト(DRサイト)へリアルタイムで同期・複製する技術です。これにより、被災時でも最新に近いデータが常にDRサイト側に準備されている状態を作ります。
フェイルオーバー
フェイルオーバーとは、メインサイトに障害が発生した際、処理を引き継ぐためにDRサイト側の予備システムへ切り替える作業を指します。

Azure Site Recovery とは?
Azure Site Recovery は、災害やシステム障害が発生した際に、事業を継続するためのDR(ディザスタリカバリ)サービスです。オンプレミス、他社クラウド、または Azure の別リージョンに存在するシステムを Azure 上に複製し、有事の際にはこの複製環境へ切り替えることで、事業を継続させます。
Azure Site Recovery を利用することで、地震や水害といった自然災害やサイバー攻撃、大規模なハードウェア障害が発生しても、システムの停止時間を最小限に抑え、ビジネスへの影響を小さくすることが可能になります。
Azure Site Recovery のメリット
Azure Site Recovery には、主に以下4つのメリットがあります。
- 多様な環境を一元的に保護
- アプリケーションの整合性を保った確実な復旧
- 本番影響ゼロのDR訓練と復旧計画による自動化
- フェイルオーバー後のネットワーク構成を柔軟に設定・維持
多様な環境を一元的に保護
多くの企業のシステムは、オンプレミスとクラウドが混在するハイブリッド環境になっています。Azure Site Recovery の最大の特長は、多様なワークロードを単一のソリューションでまとめて保護できる点にあります。
Azure VM やオンプレミス(VMware、Hyper-V、物理サーバー)、他社クラウド(AWS や Google Cloud)などのすべてに対し、Azure Portal の「Recovery Services コンテナー」という単一の管理画面から、設定・訓練・復旧のすべてを実行できます。
アプリケーションの整合性を保った確実な復旧
サーバーが再起動しても、データベースのデータが壊れていては意味がありません。
Azure Site Recovery は、単にOSをコピーするだけでなく、メモリ上のデータや保留中のトランザクションを含めて「書き込み処理を完了した瞬間」を捉えて保存する「アプリケーション整合性スナップショット」に対応しています。
これにより、復旧後にデータベースが開かないといったトラブルを防ぎ、業務アプリケーションを確実に再開できます。
本番影響ゼロのDR訓練と復旧計画による自動化
DRは構築して終わりではなく、有事の際に確実に機能するかを定期的にテストする必要があります。
テストフェイルオーバー
本番環境には一切影響を与えず、隔離されたネットワーク内でいつでもDR訓練を実施できます。
復旧計画(Recovery Plan)
「AD(Active Directory)サーバー → DB(データベース)サーバー → アプリサーバー」といった起動順序やスクリプト処理を事前に定義し、ボタンひとつで一連の動作を自動実行できます。これにより、有事の混乱の中でも人為的ミスを防ぎ、RTO(目標復旧時間)を短縮します。
Azure Site Recovery は、勝手に切り替わる「自動復旧」ではなく、あえて管理者が意図的にトリガーを実行する仕組みです。DRはメインサイトを切り離す大きな経営判断を伴うため、意図しない切り替えによるデータの先祖返りや不要なコスト発生を防ぐよう設計されています。
フェイルオーバー後のネットワーク構成を柔軟に設定・維持
フェイルオーバー後のIPアドレスなどのネットワーク再設定は大きな課題ですが、Azure Site Recovery ではフェイルオーバー後の仮想ネットワークのマッピングやIPアドレスの割り当てを事前に定義できます。元のIPアドレスを維持したまま仮想マシンを起動させることも可能なため、復旧後のDNS変更や接続設定変更などの煩雑な作業を最小限に抑えられます。
Azure Site Recovery と Azure Backup の違い
Azure でシステムを保護する際に候補にあがるのが「Azure Site Recovery」と「Azure Backup」です。これらは似た機能を持っているため混同されがちですが、その役割は目的によって明確に分かれます。
ここでは、最適なサービスを選ぶための2つの判断項目をご紹介します。
判断項目1:RTOとRPO
まず、ビジネス上の要件として「いつまでに(RTO)」「どの時点まで(RPO)」データを戻す必要があるかを確認しましょう。
- RTO(目標復旧時間):システム停止から復旧までに要する時間。「ダウンタイム」の許容時間。
- RPO(目標復旧時点):障害発生時に、どのくらい過去のデータまで遡って復旧できるかの目標値。
Azure Site Recovery | Azure Backup | |
|---|---|---|
RTO | 1時間以内(SLA保証) | 数時間〜24時間以上 |
RPO | 数秒〜数分(常に同期) | 4時間〜24時間(スケジュール指定の定期保存) |
判断項目2:機能面での違い
Azure Site Recovery は、サーバーだけでなくネットワーク構成ごと別の場所に再現するインフラ全体の「切り替え」に特化しています。
一方で、Azure Backupは、不変性や長期保存に特化し、特定のファイルやフォルダのみをピンポイントで復元する「データ保護」に優れています。
要件に合わせた最適な選択
Azure Site Recovery と Azure Backup は競合するサービスではなく、互いの弱点を補い合う関係にあります。
Azure Site Recovery は、ミッションクリティカルなシステムや、システムを1分でも早く、最新のデータで再開させたい場合に推奨されます。一方、Azure Backupは、復旧に時間がかかっても確実に過去のデータを守りたい(世代管理をしたい)場合や、コストを抑えたい場合に推奨されます。
特に重要なシステムに対しては、これら2つのサービスを組み合わせることで、あらゆる障害シナリオに対応可能な、より堅牢な保護体制を構築することができます。
Azure Site Recovery の仕組み
東日本リージョンの VM(仮想マシン)を西日本リージョンへ保護する構成を例に、レプリケーションから復元までの仕組みを解説します。
レプリケーションの仕組み

データは以下の流れで常に同期されています。
①変更を検知
VM でレプリケーションを有効にすると、「Site Recovery Mobility Service 拡張機能」が自動的にインストールされます。これにより、OSやアプリがディスクに書き込みを行うたびに、その変更差分をリアルタイムで検知します。
②キャッシュへ書き込み
検出された変更データは、同じリージョン(東日本)にあるキャッシュストレージアカウントに送られます。
直接遠くの西日本に送ると時間がかかり運用中の VM のパフォーマンスに影響が出る可能性があるため、まずは近くの場所に高速に書き込みます。
③西日本へデータ転送
キャッシュに溜まったデータは、Azure のバックボーンネットワークを通じて、西日本リージョンのレプリカマネージドディスクへ送られます。この際、データはHTTPSで暗号化されるため安全です。
④復旧ポイントの生成
西日本に届いたデータは、一定の間隔(最短5分)で復旧ポイントとして整理されます。これにより、「10分前の状態に戻す」「1時間前の状態に戻す」といった選択が可能になります。
復元(フェイルオーバー)の仕組み
Azure Site Recovery は「VM をコピーして置いておく」のではなく、「マネージドディスクの中身だけを常に最新で保持し、有事の際に即座に VM を組み立てる」という方式をとっています。そのため、平常時のコスト(VM のコンピューティング料金)を抑えることができます。

有事の際に以下の流れで西日本に VM が復元されます。
①復旧ポイントの確定とディスク生成
管理者が適切な復旧ポイントを選択し、実行ボタンを押します。すると Azure Site Recovery は選択した復旧ポイントから新しいマネージドディスクを作成します。
②VM インスタンスの作成
保存されていた設定メタデータに基づき、Azure VM が作成されます。
③ディスクのアタッチと起動
①で作成したマネージドディスクを②で作成した VM にアタッチします。
④起動
OSが起動し、サービスが開始されます。
Azure Site Recovery の料金体系
料金は、「平常時(レプリケーション中)」と「災害時やDR訓練時(フェイルオーバー後)」で異なります。ここでは、それぞれのフェーズで発生する料金の内訳を解説します。
※料金は2026年4月のものです。最新かつ正確な情報は、Microsoft が公開している Azure Site Recovery の価格および料金計算ツールでご確認ください。
平常時(レプリケーション中)にかかる主な料金
Azure Site Recovery 利用料
保護するインスタンス1台ごとにかかる月額料金です。
- オンプレミス/他クラウドから Azure へ保護する場合:約 ¥2,430/月(約$16)
- Azure VM を別リージョンへ保護する場合:約 ¥3,798/月(約$25)
※東日本リージョンの場合です。
※サーバーを保護してから最初の31日間は無料期間となります。
ストレージ料金(レプリケーションデータの保存費)
データを同期し続けるためのレプリケーションディスクの費用が発生します。
平常時に存在するのはこのディスクだけであり、VM 自体は稼働していません。CPUやメモリに対する料金(VM の稼働費)は、訓練(テストフェイルオーバー)や災害時の本番復旧(フェイルオーバー)を行った時だけ発生します。
送信データ転送料(Azure VM の場合のみ)
Azure VM を別のリージョンに保護する場合、ソース(保護元)リージョンからターゲット(保護先)リージョンへデータを転送する際に、送信データ量に応じた料金が発生します。
オンプレミスから Azure へのインバウンド(受信)データ転送は無料です。
災害時やDR訓練時(フェイルオーバー後)にかかる主な料金
仮想マシン(VM)の稼働料金
平常時はディスク(データ)のみ存在していましたが、フェイルオーバーを実行すると、DR先のリージョンで仮想マシンが起動します。これにより、選択したインスタンスサイズに応じた「コンピューティング料金」が発生します。
ストレージ料金(マネージドディスク)
フェイルオーバーを行うと、レプリカデータから実際に VM が使用するマネージドディスクが新たに作成されます。
ネットワーク・その他付随費用
フェイルオーバー後には、外部アクセス用のパブリックIPアドレス料金や、実際にユーザーがシステムへアクセスした際に発生する送信データ転送料がかかります。また、Azure Backup などを用いて、移行後の VM の保護を新たに開始した場合は、その費用も発生します。
DR(ディザスタリカバリ)対策はUSEN ICT Solutionsへ
USEN ICT Solutionsでは、お客様のシステム環境やビジネス要件(RTOやRPOなど)を丁寧にヒアリングし、Azure Site Recovery を用いた最適な災害対策環境の設計・構築をサポートいたします。
また、Azure 環境の構築にとどまらず、各拠点やクラウド間を繋ぐセキュアなネットワーク構築を含めた、包括的なソリューションをご提案も可能です。
「オンプレミスとクラウドが混在する環境に合わせた最適な構成がわからない」「BCPを強化したい」という方はぜひお気軽にご相談ください。
Azure Site Recovery やBCP強化についてのご相談はこちら
Azure Site Recovery は、オンプレミスや他社クラウドなど多様な環境のシステムを Azure 上に同期し、有事の際に素早く切り替えて事業継続を可能にするDRソリューションです。データ保護に特化した Azure Backup とは異なり、数分から1時間以内という非常に短いRPO・RTOでインフラ全体を復旧できる点が強みです。
また、平常時のコストは主にデータの同期(ストレージ)費用のみで済み、VM の稼働費を抑えながら効率的な運用が可能です。ミッションクリティカルなシステムを守るため、要件に合わせて Azure Backup との併用も視野に入れつつ、自社の強固なBCP対策にぜひお役立てください。

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