Microsoft 365(旧 Office 365)が遅い場合の対処法とは?原因と解決策を詳しく解説

「Microsoft 365 の起動が遅くて業務が進まない」
「Word や Excel でファイルの保存に時間がかかりすぎる」
こうした問題に悩まされている企業は少なくありません。Microsoft 365(旧 Office 365)は現代のビジネスに欠かせないツールである一方、動作が重くなると業務効率が大幅に低下し、従業員のストレスも増大してしまいます。
特に深刻なのは、会議中にプレゼンテーションが固まることや、重要な資料作成が遅延することによって、チーム全体の生産性が大きく低下してしまうことです。
そこで今回は、「Microsoft 365 の動作が遅くなる原因と対策」を解説します。動作が遅くなる原因を4つのパターンに分類し、それぞれに効果的な対策方法を紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
<この記事でわかる内容>
- Microsoft 365(旧 Office 365)が遅くなる原因
- Microsoft 365(旧 Office 365)が遅くなった場合の対処方法
- Microsoft 365(旧 Office 365)のパフォーマンスを高める方法
なぜ Microsoft 365 が遅い?よくある原因を4つのパターンで解説
Microsoft 365 の動作が遅くなる原因はさまざま考えられますが、ここでは代表的な4つのパターンに分類して解説します。原因がひとつであれば解決は比較的簡単ですが、複数の要因が絡み合っているケースもあります。以下を参考に、自社の原因を探ってみてください。
- ネットワーク帯域が不足している
- セッションによってプロキシ等が逼迫している
- PCのスペックが不足している
- Microsoft 365 のアプリケーション設定に原因がある
ネットワーク帯域が不足している
ネットワーク帯域の不足は、Microsoft 365 が遅くなる最も一般的な原因といえます。クラウドサービスである Microsoft 365 は、多くの処理でインターネット接続が必要となるため、相応のトラフィックが送受信されます。
インターネット回線や拠点間接続などのネットワーク環境がこのトラフィックを処理しきれない場合、直接的に Microsoft 365 のパフォーマンスに影響してしまいます。
Microsoft 365 に公式のネットワーク要件(推奨帯域など)はありませんが、Microsoft 365 アプリのひとつである Microsoft Teams は要件が公開されています。複数名でのビデオ会議を実施した際の推奨帯域は以下の通りです。
上り | 2.5 Mbps |
|---|---|
下り | 4.0 Mbps |
参照:Microsoft Teams 用に組織のネットワークを準備する|Microsoft Learn
例えば、部門会議などで20名が Teams のビデオ会議に参加していた場合、単純計算だと
上り:2.5 Mbps × 20名 = 50 Mbps
下り:4.0 Mbps × 20名 = 80 Mbps
という帯域が必要になります。
Teams だけでもこれだけの通信が発生するため、Microsoft 365 全体ではそれ以上の帯域が必要になることが分かります。

セッションによってプロキシ等が逼迫している
ネットワーク帯域の不足と混同されやすいですが、Microsoft 365 が遅くなる代表的な原因として、セッション数の問題があります。特に、Microsoft 365 の全社的な利用は、この問題を引き起こしがちです。
ネットワークにおけるセッションとは、通信の開始から終了までを意味します。このセッションは前述のトラフィックと必ずしも比例するわけではなく、トラフィック量が少なくてもセッション数は多い、といったケースも存在します。Microsoft 365 は、クラウドサービスの中でも一度に大量のセッションを張ることで知られています。
企業では一般的に、キャッシュやセキュリティ対策のためにプロキシサーバーが導入されますが、大量のセッションを想定していないスペックのものだと、それを処理し切れない場合に社内全体のWeb通信が遅くなることがあります。
プロキシサーバーに限らず、ファイアウォールなどのあらゆるネットワーク機器に同様の事象が起き得るため、通信速度に問題がない場合は、各機器のセッション処理がボトルネックになっていないか疑ってみましょう。

PCのスペックが不足している
PCのスペック不足も、Microsoft 365 のローカル環境における鈍化を引き起こします。会社全体というよりは、従業員ごとに動作の速さにバラつきがある場合に考えられる原因のひとつです。
Microsoft 365 には高機能なアプリケーションが複数あるため、メモリやCPU、ストレージ等に一定の水準が求められます。この水準を満たしていない場合、必然的に動作が重くなってしまいます。
Microsoft が公開している Microsoft 365 向けのシステム要件は以下の通りです。ただし、これらはあくまで「要件」のため、快適に利用するためにはこれ以上のスペックが求められるでしょう。
Windows
要素 | Windows |
|---|---|
コンピューターおよびプロセッサ | 1.6 GHz 以上の 2 コア。 Skype for Businessに推奨される 2 GHz 以上 |
オペレーティング システム | Windows 11、Windows Server 2025、または 2022 Windows Server。 |
メモリ | 4 GB の RAM。2 GB RAM (32 ビット) |
ハード ディスク | 4 GB の使用可能なディスク領域 |
Mac
要素 | Windows |
|---|---|
コンピューターおよびプロセッサ | 1.6 GHz 以上の 2 コア。 Skype for Businessに推奨される 2 GHz 以上 |
オペレーティング システム | Windows 11、Windows Server 2025、または 2022 Windows Server。 |
メモリ | 4 GB の RAM。2 GB RAM (32 ビット) |
ハード ディスク | 4 GB の使用可能なディスク領域 |
Microsoft 365 のアプリケーション設定に原因がある
アプリケーション自体の設定や状態も、Microsoft 365 の動作速度に大きく影響します。不要なアドインの実行や破損したファイルの蓄積、設定の競合などが、アプリケーションの正常な動作を妨げるためです。例えば、以下のような状況が該当します。
- 使用していない古いアドインが背景で動作し続けている
- Outlook に大量の未処理メールが蓄積している
- 一時ファイルやキャッシュが肥大化している
こうした問題は目に見えにくいため、原因として見落とされがちです。アプリケーション設定を最適化して、根本的に速度を改善していきましょう。
原因ごとの対策方法
ネットワーク帯域が不足している場合の対策方法
まずは、動作遅延がネットワーク帯域の不足によるものかを確認しましょう。ユーザー単位で最も簡易的な方法は、スピードテストの実施です。
情シスマンを運営するUSEN ICT Solutionsは、ボタンひとつでスピードテストを実施できる「USEN スピードテスト」も運営しています。ぜひチェックしてみてください。

ほかにも、ゲートウェイ機器のモニタリングやインターネット回線サービスのオプションなどを利用することで、トラフィックの状態を確認することができます。
実際にネットワーク帯域の不足が原因だった場合は、インターネット回線や拠点間接続の見直しが必要になります。
単一拠点であればインターネット回線を増強するのが早道ですが、Microsoft 365 の通信のみを別の冗長回線から接続させるなどの方法もあります。
一方、複数拠点の場合はもう少し複雑で、例えばインターネットの出口をコア拠点に集約している構成の場合、単純にそこの回線を増強しても解決しない可能性があります。この場合の解決方法はいくつか考えられますが、Microsoft 365 の通信のみを各拠点から論理的または物理的に分けて接続する「ローカルブレイクアウト」が主流です。
また、SASEを導入しているなど、既にインターネットの出口をコア拠点に集約しない構成の場合は、契約しているSASEサービスのアップグレードが必要になるでしょう。

セッションによってプロキシ等が逼迫している場合の対策方法
プロキシがセッションによって逼迫しているかどうかは、管理コンソールや監視ツール、コマンド実行などで確認できます。
実際に逼迫が確認できた場合、こちらもネットワークの帯域不足同様いくつかの対策が考えられます。
社内やデータセンターにプロキシサーバーを設けているのであれば、その手前に専用のアプライアンスを設けるなどして、Microsoft 365 の通信のみプロキシを経由させないといった方法があります。単一拠点・複数拠点にかかわらず、セッション数が原因の場合も前述の「ローカルブレイクアウト」が有効です。
クラウドプロキシを利用している場合は、ほとんどのサービスにおいて Microsoft 365 など特定の通信を経由させない設定が可能なはずです。まずは利用しているサービス・ライセンスのベンダーに確認してみましょう。
ローカルブレイクアウトの詳しい解説は以下のお役立ち資料で詳しく解説しています。無料でダウンロードできるため、ぜひチェックしてみてください。

PCのスペックが不足している場合の対処法
ネットワークではなくPCに問題がある場合、以下の対処法を試してみてください。
- PCを再起動する
- バックグラウンドアプリを最適化する
PCを再起動する
PCに何らかの問題がある場合、再起動はそれを解決できる最も簡単で効果的な方法になります。再起動により、メモリの解放や一時ファイルの削除、システムプロセスのリセットができるためです。
特に、PCを長時間連続使用している場合や、多くのアプリケーションを同時に開いている状況では、メモリ使用量が蓄積して動作が重くなります。Outlook や Excel、Teams、ブラウザ等を同時に開いて一日中作業していると、夕方になると動作が明らかに遅くなる、といった状況が典型的な例です。
このような場合、再起動をすることで速度が改善される可能性があります。安定したパフォーマンスを維持するために、定期的な再起動を習慣化しましょう。
なお、シャットダウンではリセットできません。仕事終わりにリセットしたいという方は、[Shift]+シャットダウンでできる「完全シャットダウン」を実行してみてください。
バックグラウンドアプリを最適化する
不要なバックグラウンドアプリの停止も、Microsoft 365 の動作が遅くなった際の対策として有効です。バックグラウンドで動作するアプリがCPUやメモリを消費し、Microsoft 365 の処理に必要なリソースを圧迫している場合、それらを停止することで Microsoft 365 の動作が快適になることがあります。
例えば、以下のようなアプリケーションが該当します。
- 自動更新のソフトウェア
- チャットアプリ
- 音楽プレーヤー
- ゲームランチャー
自分では起動した記憶がなくても、タスクマネージャーで確認すると、意外に多くのアプリがバックグラウンドで動作しているものです。動作が重いと感じた場合は、[Sihft]+[Ctrl]+[Esc]を押して、タスクマネージャーを起動してみてください。
ただし、アンチウイルスソフトや資産管理ソフトなど、会社のポリシーに基づいて動作しているアプリは、停止しないよう気を付けましょう。
Microsoft 365 のアプリケーション設定に原因がある場合の対処法
ネットワークもPCも問題がなかった場合、Microsoft 365 のアプリケーション設定に問題があるかもしれません。そのような場合は、以下の方法を試してみましょう。
- セーフモードで起動する
- 未処理のコメントを減らす
- 使わないアドインを無効化する
- Microsoft 365 を再インストールする
※必ず会社のルールやポリシーに従ってください。
セーフモードで起動する
まず、Office アプリをセーフモードで起動します。セーフモードは、Microsoft 365 の問題の原因がアドインや設定にあるかを確認する有効な方法のひとつです。最小限の機能のみで起動するため、アドインや拡張機能による影響を排除して動作確認ができます。
例えば、Excel が起動時に異常に遅い場合、[Ctrl]を押しながら Excel を開いてセーフモードで起動します。セーフモードで正常に動作すれば、インストールされているアドインが原因と特定できます。
セーフモードの機能は Word や PowerPoint、Outlook でも利用可能です。これにより、アプリケーションごとの問題を切り分けて検証でき、原因に応じた適切な対策を講じられるようになるでしょう。
未処理のコメントを減らす
大量の未処理コメントやトラッキング情報の削除を削除することで、Microsoft 365 の動作速度を改善できます。ファイル内に蓄積された変更履歴やコメントが、ファイルサイズの肥大化と処理速度の低下を引き起こす原因となるためです。
特に、Word や Excel で、複数人が協同編集を繰り返したファイルには、大量の変更履歴やコメントが残っている場合があります。例えば、企画書や仕様書など、何度も修正を重ねた文書では、ファイルサイズが当初の数倍になっていることもあります。
変更履歴の場合は、[校閲]→[承諾]→[すべての変更を反映]、コメントの場合は、[校閲]→[削除]→[ドキュメント内のすべてのコメントを削除]を実行すると、ファイルサイズを大幅に削減可能です。処理速度も向上するでしょう。
ファイルの容量が重くなっている際は定期的にメンテナンスをし、常に最適なパフォーマンスを維持するよう努めるのも大切です。
使わないアドインを無効化する
不要なアドインを無効化する方法も、Microsoft 365 の起動時間と動作速度の改善につながります。起動時にアドインが読み込まれ、バックグラウンドで継続的に動作するためです。多数のアドインがインストールされていると、大きな負荷がかかってしまいます。
例えば、過去に試用したPDFコンバーターや古いバージョンの翻訳ツール、使用していない業務アプリとの連携アドインなどが残っている場合は注意が必要です。
Excel で[ファイル]→[オプション]→[アドイン]から一覧を確認し、現在使用していないものを無効化しましょう。特に「COMアドイン」の項目で多数のアドインが有効になっている場合は、大幅な速度改善が期待できます。
Microsoft 365 を再インストールする
再インストールは、他の方法で解決できない問題に対する最終手段です。完全な再インストールによって、すべての破損ファイルや不適切な設定、互換性の問題を一掃し、初期状態に戻すことができるためです。
この際、データのバックアップは必ず取っておきましょう。OneDrive や SharePoint にすべてのファイルをバックアップし、Outlook の設定やアドレス帳をエクスポートしておくと安心です。
その後、既存のインストールを完全に削除し、最新版を新規インストールします。公式のサポートで手順やツールが公開されているため、実施の際はそちらを参照しましょう。
アップデート後に深刻な動作不良が発生した場合や、複数の問題が同時に発生している場合には、再インストールが最も確実な解決方法です。様々な方法を試してみた結果、どうしても Microsoft 365 が遅いと感じた場合は、検討してみてください。
ただし、必ず事前に担当者に相談するようにしましょう。
Microsoft 365 のパフォーマンス改善につながる3つのツール活用法
Microsoft 365が遅いと感じた場合、紹介した対策の他に以下のツールを使うのもオススメです。どのような活用方法があるのか、詳しく確認していきましょう。
- 「Microsoft 365 のトラブルシューティング ツール」を利用する
- 「Microsoft 365 ネットワーク接続テスト」を活用する
- Microsoft 365 アプリの更新プログラムを確認する
「Microsoft 365 のトラブルシューティング ツール」を利用する
「Microsoft 365 のトラブルシューティング ツール」は、Microsoft 365 の問題を自動診断・修復する公式ツールです。Microsoft 公式のツールのため、最新の問題パターンに対応しており、安全に問題の特定と解決ができます。
Outlook が起動しないという問題が起こった場合、プロファイルの破損やアドインの競合、サーバー接続の問題などを順次チェックし、発見された問題を自動的に修正してくれます。
「Microsoft 365 ネットワーク接続テスト」を活用する
「Microsoft 365 ネットワーク接続テスト」を活用して、Microsoft 365 の接続品質を客観的に評価・改善する方法もあります。ネットワークの帯域や遅延、パケットロスなどを定量的に測定し、問題の原因を正確に特定できれば、適切な対策を講じられるようになるでしょう。
例えば、Teams の会議で音声が途切れる問題がある場合、ツールを使って帯域不足や高遅延が検出されれば、ネットワーク環境の改善が必要と判断できます。
Microsoft 365 アプリの更新プログラムを確認する
定期的な更新プログラムの確認と適用は、Microsoft 365 を最適なパフォーマンスで維持するための重要な要素です。更新プログラムには、パフォーマンスの改善やセキュリティの強化、バグの修正が含まれており、最新版を使用することで安定した動作を確保できるようになります。
手動で更新している際は、[ファイル]→[アカウント]→[更新オプション]から更新を確認できますが、必ず会社の更新ポリシーに従いましょう。
Microsoft 365 が遅いと感じた場合、原因を特定し、体系的な対策を実施することで改善が見込めます。一般的に、原因は「ネットワーク帯域が不足している」「セッションによってプロキシ等が逼迫している」「PCのスペックが不足している」「Microsoft 365 のアプリケーション設定に原因がある」の4パターンに分類できます。
今回紹介した方法を参考に、快適な Microsoft 365 環境を実現し、企業全体の生産性向上につなげていきましょう。
情シスマンを運営するUSEN ICT Solutionsは、Microsoft 365 の提供はもちろん、その利用に適したネットワークの構築も得意としています。Microsoft 365 をこれから利用したいと考えている、または既に利用しているが課題を感じている企業はぜひご相談ください。

