Microsoft の Copilot とは?なにがすごい?種類やできること、注意点を解説

さまざまな生成AIが群雄割拠するなか、各サービスは差別化のための進化を続けています。Gemini であれば Google アプリとの連携、ChatGPT であれば自立型のリサーチなど毎日のようにアップデートのニュースが飛び交っていますが、なかでも自社製品・サービスとの強固な連携に取り組んでいるのが Microsoft の Copilot です。
Microsoft は従来からPCにおける作業には欠かせない Office 製品を提供してきましたが、Copilot はそのリソースを活かしてシナジーを生み出しています。
本記事では、Microsoft 製品・サービスを日常的に使う方であれば今後活用すること間違いなしの Copilot について、なにがすごいのか、どういった種類があるのか、また契約時の注意点などを解説します。
※本記事は2025年6月時点での情報を掲載しています。AI関連の製品・サービス名は変更が多いため、それぞれの公式サイトも参照してください。

Copilot とは
「Copilot」とは、Microsoft が提供するAIソリューションです。現在 Copilot は複数のサービスにまたがっており、スタンドアロンで使えるものもあれば、Microsoft 製品・サービスに一機能として組み込まれているものもあります。
今では当たり前となりつつある文章・画像生成をはじめ、Microsoft 365 アプリ内での作業支援、開発環境でのコーディング支援など、単に Copilot と言ってもできることはさまざまです。
Copilot と Bing Chat の違い
「Bing Chat」や「Bing Chat Enterprise」は Copilot の旧称です。Bing Chat は Microsoft Edge 内で提供され、Bing Chat Enterprise は主に Microsoft 365 の一部プランで提供されていましたが、2023年に Copilot にリブランドされました。
Bing Chat / Bing Chat Enterprise がよくあるチャットインターフェースの生成AIだったのに対し、Copilot は Microsoft 365 アプリ連携や GitHub でのコーディング支援などが強化され、より Microsoft らしさが際立っています。
ちなみに…「Copilot」ってどういう意味?
多様なAIサービスが台頭するなかで、「Copilot」という言葉を目にする機会が多くなりました。Copilot(コパイロット) とはもともと「副操縦士」という意味で、AIサービスにおいては「操縦士たるユーザーをサポートする」といった意味合いで使われています。
勘違いしやすいですが、Copilot は Microsoft 製品・サービスだけに使われている言葉ではありません。Copilot を冠するサービスはほかにも以下のようなものがあります。
- AWS Copilot(AWS)
- Einstein Copilot(Salesforce)
- Snowflake Copilot(Snowflake)
とはいえ、一般的には Copilot と言えば Microsoft という認識になっているのは間違いないでしょう。
Microsoft が提供する Copilot の種類
Copilot は複数のサービスにまたがっており、スタンドアロンで使えるものもあれば、Microsoft 製品・サービスに一機能として組み込まれているものもあります。
代表的なものは以下の通りです。
種類 | 対象 | 料金(税抜き) |
---|---|---|
Microsoft Copilot | 個人向け | 無料 |
Microsoft Copilot Pro | 個人向け | 1ユーザーあたり ¥3,200/月 |
Microsoft 365 Copilot Chat | 法人向け | Microsoft 365 サブスクリプションを持つ Microsoft Entra ID ユーザーは追加料金なし |
Microsoft 365 Copilot | 法人向け | 1ユーザーあたり ¥4,722/月(年間契約 月払い) |
Microsoft Copilot Studio | 法人向け | 25,000メッセージ ¥29,985(月相当 年払い)または従量課金制 |
Microsoft Security Copilot | 法人向け | 1時間ごとに1か月間にプロビジョニングされた SCU の数と、使用される追加の超過容量に基づいて推定 |
GitHub Copilot | 個人・法人向け | 1ユーザーあたり(月払い) |
参考:Microsoft Copilot Pro、Microsoft 365 Copilot、Microsoft Copilot Studio、Microsoft Security Copilot の価格、GitHub Copilot
※2025年6月時点の情報です。
※GitHub Copilot は Microsoft 傘下の GitHub による提供です。
上記の通り、Microsoft は個人向けにも法人向けにも製品・サービスを提供しているため、それを横断する Copilot も複雑になっています。
それぞれどういったことができるのかを解説します。
Microsoft Copilot|日常的な作業をサポートする生成AI
Microsoft Copilot はチャットインターフェースの対話型生成AIで、個人向けに無料で提供されています。ChatGPT や Gemini などと同様、自然言語による質問回答やテキスト生成、アイデア創出を得意としています。
最大の特徴はそのアクセス性の高さで、Microsoft Edge や Microsoft Bing、Windows など主要な Microsoft サービスに標準で組み込まれています。特に Windows 向けのものは「Copilot in Windows」という名称で Windows 10/11 の最新バージョンに搭載されており、自然言語で画面の明るさ調整やアプリの起動も可能になります。

Microsoft Copilot Pro|作業を更にサポートするAIアシスタント
Microsoft Copilot Pro は Microsoft Copilot の有料版で、個人向けに提供されています。チャットインターフェースの生成AIを主機能とする点では Microsoft Copilot と変わりませんが、最新AIモデルへの優先アクセスが可能な点、使用制限が拡張されている点※で違いがあるようです。
※Microsoft Copilot の明確な制限値については公式に発表されていません(2025年6月時点)。
加えて、一部の Microsoft 365 アプリで組み込みの Copilot 機能を使えるようになります。以下の通り、それぞれ「Copilot in 〇〇」という名称で提供されています。
名称 | 機能 |
---|---|
Copilot in Word | Word 内で文章の作成や書き換えをサポートする |
Copilot in Excel | Excel 内で数式の生成やデータの分析、視覚化をサポートする |
Copilot in PowerPoint | PowerPoint 内で素案の作成やデザイン、要約をサポートする |
Copilot in Outlook | Outlook 内でメールの作成や要約をサポートする |
Copilot in OneNote | OneNote 内でメモの要約やToDoリストの作成をサポートする |
個人向け Microsoft 365 サブスクリプション(Microsoft 365 Personal や Microsoft 365 Family)を別途契約している場合はデスクトップアプリで上記 Copilot を使えますが、契約がない場合でもWeb版で利用できます。
法人向け Microsoft 365 サブスクリプションを契約している環境では Microsoft Copilot Pro を使うことができないため注意してください。法人で同様のことを実現したい場合は後述する Microsoft 365 Copilot を利用しましょう。
Microsoft 365 Copilot Chat|企業利用に最適な生成AI
Microsoft 365 Copilot Chat は、法人向けに提供される対話型の生成AIです。Microsoft 365 サブスクリプション※を持つ Microsoft Entra ID ユーザーが追加料金なしで利用できます。
※Microsoft 365 Copilot Chat を利用できないサブスクリプションもあります。
Microsoft Copilot と似ていますが、Microsoft 365 Copilot Chat は法人向けらしく Microsoft 365 アプリ(Word や Excel)で作成されたデータを参照できるのが特徴です。業務のメインツールとして Microsoft 365 アプリを利用している企業にとっては非常に有益と言えるでしょう。
Microsoft 365 Copilot|仕事を革新するAIアシスタント
Microsoft 365 Copilot は、Word や Excel、PowerPoint、Outlook、Teams などの Microsoft 365 アプリに統合されたAIアシスタントです。法人向けに有料で提供されています。
Microsoft 365 アプリで組み込みの Copilot 機能を使えるという点では前述の Microsoft Copilot Pro と同じですが、法人向けに提供されている点、Microsoft Teams でも Copilot が使える点などで異なります。
名称 | 機能 |
---|---|
Copilot in Microsoft Teams | Teams 内でチャット内容の要約や重要ポイントのピックアップ、Web会議の文字起こしから会議内容の要約 |
Copilot in SharePoint や Copilot in Loop など他のコラボレーションアプリにも組み込まれており、Microsoft 365 を使い込んでいる企業にとってはメリットが多いでしょう。
もちろん Microsoft 365 Copilot Chat も使えるため、生成AI的な活用もできます。
Microsoft Copilot Studio|自社オリジナルのAIエージェント
Microsoft Copilot Studio は、ローコードでAIエージェントを構築できるプラットフォームです。法人向けに有料で提供されています。
Copilot の機能をある程度オリジナルにカスタマイズして使うことができ、普段の業務プロセスを自動化したり、社内データを学習させて Teams 上でチャットボットとして動かしたりできます。
前述した Microsoft 365 Copilot の“拡張“のような立ち位置のため、Microsoft Copilot Studio を利用するためには別途法人向け Microsoft 365 サブスクリプションが必要になります。
Microsoft Security Copilot|組織のセキュリティを支援する生成AI
Microsoft Security Copilot は、生成AIを活用して組織のセキュリティを支援する機能です。Microsoft Sentinel や Microsoft Defender XDR、Microsoft Intune などに組み込まれる形で法人向けに提供されています。
組織内で発生したインシデントを検知・分析し、生成AI的に原因や対策をアウトプットするといったことが可能です。
GitHub Copilot|開発を加速するAIペアプログラマー
GitHub Copilot は、Microsoft 傘下の GitHub が提供するAIコーディングアシスタントです。GitHub をはじめ、Visual Studio Code や Azure Data Studio などの Microsoft 製のツールで使用することができ、開発中に入力されるコードの補完や自然言語でのコーディング支援を実現します。
Copilot はなにがすごい?実際に役に立つ点を解説
様々な Copilot があるなかで、実務的に役立つであろうポイントは以下の通りです。
- Teams で議事録やタスクの作成・整理ができる
- Excel のデータを分析・可視化できる
- PowerPoint でプレゼン資料を作成できる
上記の対象となる Copilot はどれなのか、実際の画面とともに簡単にご紹介します。
Teams で議事録やタスクの作成・整理ができる
対象:Microsoft 365 Copilot
Copilot in Microsoft Teams では、Teams 上での文字起こしを要約してくれたり、会議で出たタスクをリストアップしてくれたりします。また、発言者の自動判別も可能なため、高精度な議事録を自動作成できます。


Excel のデータを分析・可視化できる
対象:Microsoft Copilot Pro、Microsoft 365 Copilot
Copilot in Excel では、AIを活用したデータ分析・可視化ができます。例えば、入力したデータから適切な表・グラフを自動作成したり、自然言語で要望する数式を取得したりといったことが可能です。特に数式に関してはいちいちWebで調べる手間が省けるため、作業を大きく効率化してくれるでしょう。
Copilot in Excel は[ホーム]タブの一番右から呼び出すことができます。

PowerPoint でプレゼン資料を作成できる
対象:Microsoft Copilot Pro、Microsoft 365 Copilot
Copilot in PowerPoint では、AIを活用したプレゼン資料作成ができます。例えば、Word で作成した文章をもとにスライドを自動生成したり、少し面倒なスライド横断の修正を Copilot に代行させたりすることが可能です。イラストやアニメーションもつけてくれるため、ある程度のクオリティのプレゼン資料であればだれでも簡単に作れるようになります。
Copilot in PowerPoint は[ホーム]タブの一番右から呼び出すことができます。

Copilotを利用する際の5つの注意点
ハルシネーションや個人情報・機密情報の学習など、AIを使用する際には気を付けるべきことが多くあります。一方、Copilot は契約関連でも注意点があるため、ここでは代表的な5つの例をご紹介します。
- 生成AI的な機能のみを利用したい場合、有料版はオーバースペックになり得る
- Microsoft Copilot Pro は法人向け Microsoft 365 環境では利用できない
- 法人利用の場合 Microsoft 365 サブスクリプションが必須になる
- Microsoft 365 Copilot Chat は一部の Microsoft 365 サブスクリプションでは利用できない
- Microsoft 365 Copilot の試用版は提供されていない
対話型の生成AIのみを利用したい場合、有料版はオーバースペックになり得る
生成AIといえば「チャットインターフェースで文章や画像を生成してくれるツール」を想像する方も多いでしょう。Copilot のなかでは MIcrosoft Copilot や Microsoft 365 Copilot Chat がそれに該当しますが、こういった機能のみを使いたい場合は無料版で済む可能性があります。
というのも、有料版である Microsoft Copilot Pro や Microsoft 365 Copilot は、Microsoft 365 アプリとの連携が最大の特徴なため、これらが不要であれば費用対効果を感じづらいのです。
制限はあるものの Microsoft Copilot は誰でも無料で使えますし、企業の場合は法人向け Microsoft 365 サブスクリプションがあれば Microsoft 365 Copilot Chat を追加料金なしで利用できます。まずはこれらを使ってみて、Microsoft 365 アプリ連携の必要性を感じたら有料版を検討しましょう。
Microsoft Copilot Pro は法人向け Microsoft 365 環境では利用できない
似たような名称が多いため誤解しやすいですが、Microsoft Copilot Pro はあくまで個人向けに提供されているサービスです。そのため、法人向け Microsoft 365 を利用している(サインインしている)環境では Microsoft Copilot Pro を利用することができません。
所属している組織で買い切り型の Microsoft Ofifce ライセンスを利用していれば Microsoft Copilot Pro との併用は可能ですが、そもそも Microsoft 365 との連携がメリットであることを考えると意味がないかもしれません。
法人利用の場合 Microsoft 365 サブスクリプションが必須になる
法人で Copilot を利用したい場合 Microsoft 365 Copilot を契約することになりますが、別途法人向け Microsoft 365 サブスクリプションも必要となります。
前提条件となる Microsoft 365 サブスクリプションは以下の通りです(2025年6月時点)
- Microsoft 365 Apps for enterprise、または Microsoft 365 Apps for business
- Microsoft 365 Business Basic、Business Standard、または Business Premium
- Microsoft 365 E3、E5、F1、または F3
- Office 365 E1、E3、E5、または F3
- Exchange Online Kiosk、プラン 1、またはプラン 2
- OneDrive for Business Plan 1、または Plan 2
- SharePoint Online プラン 1、またはプラン 2
- Teams Essentials、または Teams Enterprise
- これらのプランに Teams を含まないバージョン
Microsoft 365 Copilot のみを契約しても Copilot 機能を使うことはできないため注意してください。
Microsoft 365 Copilot Chat は一部の Microsoft 365 サブスクリプションでは利用できない
Microsoft 365 Copilot Chat は法人向け Microsoft 365 サブスクリプションに追加料金なしで標準搭載されていますが、一部のサブスクリプションには適用されません。
Microsoft 365 Copilot Chat が搭載されている Microsoft 365 サブスクリプションは以下の通りです。
- Microsoft 365 A1/A3/A5 (学生向け MA3/MA5、教員向け MA3/MA5、MA3/MA5 学生利用特典を含む)
- Microsoft 365 Business Basic/Business Standard/Business Premium
- Microsoft 365 E3/E5
- Microsoft 365 F1/F3
- Microsoft Teams/Teams Enterprise/Teams Essentials/Teams Rooms
- Office 365 A1/A1 Plus/A3/A5
- Office 365 E1/E1 Plus/E3/E5
- Office 365 F3
引用:Microsoft 365 Copilot チャットを管理する
特に注意すべきなのは、企業で広く導入されている Microsoft 365 Apps for business/Enterprise には適用されないという点です。一方で、同一テナントに上記いずれかのサブスクリプションが1ライセンスでも含まれていれば、テナント全体のユーザーが Microsoft 365 Copilot Chat を利用できるとされています(2025年6月時点)。
Microsoft 365 Copilot の試用版は提供されていない
2025年6月時点で、Microsoft 365 Copilot の試用版は提供されていません。つまり、Copilot in Word や Copilot in PowerPoint、Copilot in Microsoft Teams といったアプリ組み込みの Copilot を事前に試す方法はないということです。
Microsoft 365 Copilot は1ユーザーあたり ¥4,722/月(年間契約 月払い)と決して安価ではないため、検討する際は Microsoft パートナーなどに相談し、自社にとって効果があるのかを吟味しましょう。

どの Copilot を利用するべき?サービス早見表
これまで解説した Copilot のなかで、混同しがちな4種の選び方を図解します。
- Microsoft Copilot
- Micorosoft Copilot Pro
- Microsoft 365 Copilot Chat
- Microsoft 365 Copilot
特に有料の Copilot を検討している方は、間違ったサービスを契約してしまわないよう参考にしてみてください。

Copilot は、Microsoft が提供するあらゆるサービスで利用できるようになっています。それ故に、Copilot を冠するサービスは少々複雑になっており、特に有料版を契約する際には注意が必要です。
法人の場合はさらに、有料版の Microsoft 365 Copilot を利用するにあたっては特定の Microsoft 365 サブスクリプションが必要です。Microsoft 365 は Copilot 以上にプランが複雑ですので、契約をしたい場合は Microsoft 365 パートナーに相談すると良いでしょう。
情シスマンを運営するUSEN Smart Worksは Microsoft パートナーです。Copilot が気になる方、Copilot を導入するにあたって Microsoft 365 の導入を検討されている方はぜひご相談ください。