【2027年度からIPA試験が大変革?】情報処理技術者試験の再編と「登録セキスペ」のゆくえ

経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構、以下IPA)は2026年3月31日、情報処理技術者試験および情報処理安全確保支援士試験の試験区分体系の見直しについて、検討状況を発表しました。現行の試験制度は2026年度の実施で終了し、2027年度からは新しい区分体系へと移行する予定です。
現在の制度は2009年(平成21年)に始まったもので、今回の見直しは約18年ぶりとなります。ただの名称変更ではなく、これまで「応用情報技術者試験」と8区分の「高度試験」に分かれていた専門人材向けの試験を、まとめ直す大規模な再編です。
この背景には、2025年5月に経済産業省とIPAが公表した「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会報告書」があります。同報告書は「スキルベースの人材育成」を掲げており、AIやデジタル時代に必要な能力に合わせて試験の枠組みを組み直す方針が示されています。
なお、IPAは「今回の公表内容は現時点での検討状況であり、今後変更の可能性がある」と説明しています。本記事の内容も最新の正式発表により変更される場合があることにご注意ください。
見直しの5つのポイント
IPAが示した見直しのポイントは、大きく次の5点です。
- 「データマネジメント試験」(仮称)の新設
- 「ITパスポート試験」の出題構成の変更
- 「プロフェッショナルデジタルスキル試験」(仮称)の新設
- 「情報セキュリティマネジメント試験」「基本情報技術者試験」の一部変更
- 「情報処理安全確保支援士試験」の一部変更
「データマネジメント試験」(仮称)の新設
主にビジネス部門向けで、データの整備や管理スキルを評価する試験です。ITパスポート試験の次のステップとして位置づけられます。
「ITパスポート試験」の出題構成の変更
従来の「ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系」から「ビジネス、テクノロジ、セキュリティ・倫理」へ再編されます。AI時代に対応できるよう、セキュリティ・倫理分野が強化されます。
「プロフェッショナルデジタルスキル試験」(仮称)の新設
応用情報技術者試験と高度試験を統合し、3つの区分へ再編されます。
「情報セキュリティマネジメント試験」「基本情報技術者試験」の一部変更
科目A・科目Bの出題範囲体系が見直されますが、問われる知識や技能の範囲自体は変わりません。
「情報処理安全確保支援士試験」の一部変更
科目Aの体系変更と、科目Bでマネジメント分野の強化、試験時間ならびに出題形式の見直しが行われます。
「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」への統合
今回の再編でもっとも大きな影響があるのは、専門人材向け試験の統合です。これまでの応用情報技術者試験と8つの高度試験は、「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」という3つの区分にまとめなおされます。
新区分(仮称) | 評価する専門知識・技能 |
|---|---|
マネジメント領域 | データ・デジタル技術を利活用するプロセスをマネジメントする能力 |
データ・AI領域 | データドリブンな活動を支える基盤構築・データ整備の能力 |
システム領域 | システムの要件定義・アーキテクチャ設計・開発・運用を主導する能力 |
これまで「ITストラテジスト」「システムアーキテクト」「プロジェクトマネージャ」「ネットワークスペシャリスト」「データベーススペシャリスト」「エンベデッドシステムスペシャリスト」「ITサービスマネージャ」「システム監査技術者」と細かく分かれていた高度8区分が、3つの新たな領域へと集約される形です。分業を前提とした専門特化型から、AIも活用しながら横断的に価値を生み出せる人材像へと、評価軸そのものが転換されると説明されています。
「データマネジメント試験(仮称)」の新設
新設される「データマネジメント試験(仮称)」は、データやAIを効果的に使うための基礎知識と技能を評価する試験です。主にビジネス部門の担当者が受験することを想定しており、ITパスポート試験の次の段階として位置づけられています。試験時間は科目A・B合わせて120分で、科目Aが48問、科目Bが12問の出題予定です。
この試験は、エンジニアだけでなく、事業部門でデータを扱う人材の層を広げる狙いがあることが伺えます。
セキュリティ人材に直結 — 情報処理安全確保支援士試験はどう変わるか
セキュリティ業界にとって注目すべきは、情報処理安全確保支援士試験(登録セキスペ)の扱いです。結論として、情報処理安全確保支援士試験は再編後も独立した区分として存続します。高度試験のように他の区分へ統合されることはありません。ただし、内容や試験形式には以下の変更点があります。
- 科目A(知識)の出題範囲体系の変更
- 科目B(応用)でマネジメント分野を強化
- 試験時間および科目Bの出題形式の変更
新制度での構成は、科目A-1が45分(30問)、科目A-2が35分(25問)、科目Bが120分(12問)となる予定です。技術力だけでなく、マネジメントの視点をより重視する方針が見て取れます。
また、資格の維持に関しては、2026年4月1日から「みなし受講」制度も始まっています。今までは、登録セキスペ資格を維持するために年1回の共通講習と3年に1回の実践講習が必須となっており、資格保有者の負担となっていました。新制度では、所定の実務経験があれば共通講習のみで資格を維持できるようになっています。
登録セキスペは、後述するSCS評価制度で「セキュリティ専門家」として認められる資格のひとつでもあります。試験区分として存続し、資格維持の負担も軽くなることは、社内の人材確保や育成を考える企業にとってもプラス材料です。
更に詳細な情報に関しては、IPAが提供する「情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 出題範囲等の改定案 Ver.1.0」をご覧ください。
記述式・論述式の見直しと全面CBT化
試験形式の変化も大きなポイントです。
まず、新しいプロフェッショナルデジタルスキル試験では、出題形式が多肢選択式を中心とした構成になる見込みです。これまで応用情報・高度試験で出題されていた記述式・論述式の問題については、経済産業省が「CBT方式に適した出題形式へ見直す」としており、長文記述に多くの時間を使っていた受験者は、学習スタイルの見直しが求められそうです。
一方で、論述式の問題が今後どうなるかは、まだ確定していません。経済産業省は「論述試験のあり方は、2028年度以降に向けて継続検討する」としており、現時点では具体的な制度設計までは示されていません。論述がどんな形で残る(あるいは残らない)のかは、今後の発表を待つ必要があります。
また、応用情報・高度試験・登録セキスペ(情報処理安全確保支援士試験)の各試験は、2026年度からCBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式に移行します。ただし、新しい試験制度そのものへの移行は2027年度からで、データマネジメント試験やプロフェッショナルデジタルスキル試験などは2027年度の夏頃から秋頃に開始される見込みです。
現行の制度は2026年度で終了
IPAが公開している「情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について」によると、現行の試験制度は2026年度の実施をもって終了し、新制度の各試験は次のスケジュールで開始される予定です。
時期 | 開始予定の試験 |
|---|---|
2027年度 春頃 |
|
2027年度 夏頃〜秋頃 |
|
免除制度については、プロフェッショナルデジタルスキル試験において、現行の高度試験と同等の免除制度を設ける方向で検討が進められています。また、旧制度から新制度への移行に関する経過措置も検討されています。新たなシラバスやサンプル問題は準備ができ次第順次公開され、2026年度の夏ごろには出そろう予定です。
受験予定者は、まず現行制度での学習を着実に進めつつ、IPAの公式情報を継続して確認していくとよいでしょう。
SCS評価制度との接点 —「登録セキスペ」は審査する側として持っておきたい資格
近年関心が高まるサプライチェーンセキュリティ対策の一環として、経済産業省が検討を進めているのが「SCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)」です。
同省が公表した「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度 に関する制度構築方針」によると、この制度では、★3「専門家確認付き自己評価」を審査・確認できる「セキュリティ専門家」として、以下の6種類の資格が認められています。情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)は、この中で唯一の国家資格と位置づけられています。
資格名 | 種別 | 認定機関 |
|---|---|---|
情報処理安全確保支援士(登録セキスペ) | 国家資格 | 独立行政法人情報処理推進機構(IPA) |
公認情報セキュリティ監査人(CAIS) | 民間資格 | 日本情報セキュリティ監査協会(JASA) |
CISSP | 国際資格 | (ISC)² |
CISM | 国際資格 | ISACA |
CISA | 国際資格 | ISACA |
ISO27001 主任審査員 | 国際資格 | 各認定審査機関 |
今回の試験再編で高度8区分は大きく変更されますが、登録セキスペが試験区分として残る点は重要です。SCS評価制度の専門家要件(資格+指定研修)を満たすものとして、今後も有効な選択肢となるでしょう。なお、詳細な研修要件については今後IPAから発表される予定なので、最新情報は公式発表で確認するようにしましょう。
IPAや経済産業省からの最新情報にアンテナを張っておく
2027年度からの情報処理技術者試験の再編は、約18年ぶりとなる大きな転機です。改めて今回の主なポイントをまとめます。
- 応用情報+高度8区分が「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」3区分(マネジメント、データ・AI、システム)に統合
- 「データマネジメント試験(仮称)」の新設
- 情報処理安全確保支援士試験は区分として存続し、内容や形式も一部見直し
- 論述式・記述式は原則的に廃止し、全区分がCBT方式へ移行
- 現行制度は2026年度で終了、新制度は2027年度から順次開始
この制度は今後も更新が予想されます。受験や人材育成を検討する場合には、IPAや経済産業省の公式情報を常に確認し、自社の人材戦略に組み込んでいくことが大切です。
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