近年、従業員一人ひとりのニーズや世情に合わせたニューノーマルな働き方の浸透により、企業はあらゆる状況においても生産性を落とさずに事業を継続していく方法を得ました。
それと同時に自社ネットワークにとっての安全圏と危険区域の境界線が曖昧になり、より一層、多種多様な「脅威」へアンテナを張らざるを得ない状況に。
従来のセキュリティ概念ではカバー出来ない脅威への対抗策が必要な今、注目されているMDRについて解説していきたいと思います。

MDRとは?

MDRとは“Managed Detection and Response”の略で、端的に表現すると「脅威検知インシデント※処置を代行するアウトソーシングサービス」です。
日々巧妙化していくサイバー攻撃や多様な働き方から派生する内部不正(悪意のあるものだけではなく過失によるものも含めて)を相手に、100点満点のセキュリティ対策を用意する事は出来ません。
このような「脅威」は防ぐだけではなく、既にネットワーク内に存在を許してしまった脅威をいち早く検知し、最小限の被害で収束させるよう素早く対応をとる事が重要とされています。

※インシデント...情報セキュリティの分野において、情報管理やシステム運用に関して保安上の脅威となる人為的な事象のこと

MDRが注目されている背景

多様化するサイバー攻撃に対処するために、情シス担当はこれまで以上に専門スキルを求められるようになりましたが、現在国内の企業数に対して然るべき専門スキルを持った人材は不足しています。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2020年3月に実施した「CISO 等やセキュリティ対策推進に関する実態調査」によると、専任のセキュリティを統括する責任者(CISO:Chief Information Security Officer)の設置状況は7.5%、インシデントの対応チーム(CSIRT:Computer Security Incident Response Team)に1名以上の専任者を設置している企業は31.1%でした。
つまり、多くの企業は情シス担当が他の業務を兼任している、もしくは情シス担当は存在するもののシステムエンジニアやネットワークエンジニアであり、情報セキュリティにおける専任者は不在であるということがわかります。
また、JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査報告書 2021」では、情報セキュリティに関する人材は不足していないと回答した企業は、全体の8.2%に留まる結果となりました。

図表9-5-1 情報セキュリティ人材の不足状況
引用:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書 2021」 情報セキュリティ人材の不足状況より

このように、セキュリティ人材不足については既に企業にとって喫緊の課題となっており、だからこそMDRのようなマネージドサービスが注目されているというわけです。

セキュリティ運用の重要性

世の中には既に様々なセキュリティ対策サービスが存在しますが、導入さえすれば後は安心というものはありません。スーパーで食材を買っただけではお腹が満たされない事と同じです。何が食べたいのか決めてから料理をするスキルがある人に料理をしてもらってやっと食べられるようになります。料理が出来なければ食材を腐らせる以外に道はありません。
セキュリティ対策においては、製品を導入するだけではなく、予め自社のセキュリティポリシーを策定し、それに則したポリシー設定を行う必要があります。
何を異変と見なすのか、異変を検知した際にはどのような対処(アラート?ブロック?)を行うのか、また検知後の人的対処や分析等も行う必要があります。
折角導入した製品を利活用出来るか腐らせるかは「専門的スキルやノウハウを用いた運用が出来るか否か」が鍵を握ります。

SOCとの違いとは?

MDRの関連用語でSOCという言葉も出てきますよね。
SOCは「Security Operation Center 」の略称であり、24時間365日体制でネットワークやデバイスを監視し、サイバー攻撃の検出や分析、対応策の検討を行う組織の事を指します。
前段にて「セキュリティは運用出来るか否かが鍵」と申し上げましたが、SOCは従来の情シス担当やネットワークエンジニアよりも、ログ分析や脅威検知に特化した、より専門性の高いスキルを持った部門となります。
社内にSOCを設置できるのが理想ではあるものの、適切な人材を保有している企業はごく僅かでしょう。
そこで、こうした脅威の検知・対応の作業をサービスとして代行してくれるのがMDRです。企業はMDRを利用することで、自社に高いスキルやノウハウを持つ専門家がいなくてもネットワーク内に存在する脅威の検知とブロック、システムの回復、再発防止策の検討・実装などができるようになります。SOCのマルウェア感染後の対応に重点を置いて自動化したものがMDRに位置します(これにMMSを足すとSOCになるでしょうか)

MDR導入時のポイントとは?

MDRの導入を検討している企業が始めに理解しておかなければならないことは、各ベンダーが謳うMDRが同じものではないということです。
専門性の高いスキルとノウハウが必要であるからこそ、サービス内容にベンダーのカラーが出ます。
監視対象範囲、脅威検知時の通知方法、検知ポリシー設定の調整、インシデント発生時の復旧や詳細な調査、どこまでがどのレベルで提供されるのかを調べるべきでしょう。
全てやってくれるベンダーが最善というわけではありません。
例えば、自社で専門知識がある人材を確保できているもののリソースが足りてないという場合は、そもそも検知とアラートまでが出来ればいいという事もあるでしょうし、脅威検知系のセキュリティサービスは導入済であるものの運用が難しくて活用出来ているか不安という企業もいるでしょう。

既存のネットワーク構成、セキュリティ体制を見返して、是非不足している所が補えるサービスを見つけて下さい。

まとめ

サイバー犯罪者は時代の流れと共に、自らのスキルを誇示したいという目的から金銭目的に移行し、coder(ウィルスを作る人)、集金代行、マネーロンダリング担当と分業化され、組織化してきています。また闇市場でそれらの手法は売買されており、サイバー犯罪者としてのスキルがなくとも攻撃を仕掛ける事が可能になった今、自社が「狙いやすい企業」のままでいるわけにはいきません。
社内にセキュリティに明るい人材がいなければ、MDRのようなマネージドサービスを選択肢の一つにしてみてください。

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