CCNA を取得することでセキュリティ対策につながること

CCNA とは?
CCNA(Cisco Certified Network Associate)とは、シスコシステムズが提供する世界的に認められたITネットワーク認定資格です。ネットワークの基礎やIPサービス、セキュリティ、自動化、AI技術など幅広い知識と技術を体系的に証明でき、エンジニアとしてのキャリアアップに最適です。CCNA はITインフラ分野の「登竜門」とされ、将来的にクラウド技術などを扱う上でも非常に有用な、長期的に役立つ価値のある資格と言えます。さらに、ファイアウォールやVPNなど防御の要となるネットワーク基盤の基礎(通信フロー・認証・セキュリティ設定)を網羅的に学ぶことができるため、ネットワーク機器のセキュリティ実装スキルの基礎力を証明する上で重要な役割を果たします。
筆者も CCNA を取得した上でネットワークエンジニアとして現場に参画しました。CCNA はネットワークエンジニアに対してだけではなく、近年では情報システム担当者やセキュリティエンジニアにとっても重要な知識となっています。
なぜ今「CCNA」なのか?
前述した通り、CCNA はネットワークエンジニアの登竜門として知られる資格です。しかし現在のIT環境では、ネットワークエンジニアだけでなく、情報システム担当者やセキュリティエンジニアにとっても重要な基礎知識となっています。
企業のITインフラは、PCやサーバー、クラウド、セキュリティ製品など様々な要素で構成されていますが、それらをつないでいるのはすべてネットワークです。
つまり、ネットワークを理解せずにITやセキュリティを理解することはできません。CCNA では、通信の仕組みやネットワーク構造を体系的に学ぶことができ、ネットワークとセキュリティの両方の理解につながる「入口」となる資格と言えます。
一般的な情報システム部門の業務
一般的な情報システム部門は、社内ITインフラの構築・運用・保守を担う部署です。主な業務には以下があります。
- 社内ネットワークの設計・管理
- ネットワーク構成図や物理配線図の管理
- 拠点間ネットワークの整備
- 無線LAN環境の調査・改善
- PC・サーバー・ソフトウェアの管理
- ITヘルプデスク
- セキュリティ対策
- DX推進や業務効率化
企業のIT環境を支える「縁の下の力持ち」的な存在の仕事が「情報システム部門」です。このような業務を行う上で、CCNA の知識は非常に役立ちます。
セキュリティエンジニアの業務
セキュリティエンジニアの主な役割
セキュリティエンジニアと一言で言っても、その業務内容はさまざまです。代表的なものとして、以下のような役割があります。
セキュリティ診断(ペネトレーションテスト・脆弱性診断)
Webアプリケーションやネットワーク機器に対して疑似攻撃を行い、脆弱性の有無を調査する業務です。攻撃者の視点からシステムを分析し、セキュリティ上の問題点を特定します。通信の流れやネットワーク構造を理解する必要があるため、TCP/IPやネットワークの知識が重要になります。
セキュリティアーキテクト
企業全体のセキュリティ設計を行う役割です。ネットワーク分離やゼロトラスト、アクセス制御などのセキュリティアーキテクチャを設計し、安全なIT基盤を構築します。この分野では、VLANやACL、VPN、ファイアウォールなどのネットワーク技術が密接に関係します。
SOC(Security Operation Center)
SOCは、企業のシステムやネットワークを24時間監視し、セキュリティインシデントの兆候を検知・分析する組織です。ログ分析やアラート調査を通じて攻撃の兆候を見つけるため、通信ログやネットワーク挙動の理解が重要になります。
インシデントレスポンス
実際にセキュリティ事故が発生した際に、被害の拡大を防ぎ、原因調査や復旧対応を行う役割です。攻撃経路の特定や通信の調査など、ネットワークの知識が不可欠になります。
CCNA の知識が実務にどう活きるか
スイッチングと冗長化(情シス・インフラエンジニア)
ネットワークの安定を支えるのが、STP(スパニングツリー)や、HSRP・VRRPといった冗長化技術です。情報システム部門(情シス)の運用担当者にとって、これらは障害発生時の命綱となります。例えば、LANケーブルの誤接続による「ネットワークループ」の発生を防いだり、メインルーターが故障した際に数秒でバックアップ機へ切り替わる設定を理解しておくことで、ビジネスを止めない安定したインフラ運用が可能になります。
STP
スイッチ間で構成された冗長構成において、フレームの無限ループを防ぐレイヤー2プロトコル。ポートを論理的にブロッキングしてループを回避し、障害発生時には自動的に通信経路を切り替えるため、LANの安定性と耐障害性を高める重要な技術です。
HSRP・VRRP
シスコシステムズが開発したデフォルトゲートウェイを冗長化するプロトコル。複数のルーターを1つの仮想ルータとして動作させ、アクティブルーターの故障時にスタンバイが自動的に切り替わることで、通信断を防ぎ高可用性を実現できます。VRRPは、複数のルーターやL3スイッチを1台の仮想的なルーターに見せかけ、デフォルトゲートウェイを冗長化(二重化)する通信プロトコル。マスター機が故障しても、バックアップ機が自動で仮想IP/MACアドレスを引き継ぎ、通信を継続します。
ネットワーク管理サービス(SOC・インシデント対応)
DHCPやDNS、NTP、Syslogといったネットワークの基本サービスは、SOCでのログ分析において不可欠な知識です。不審な通信が発生した際、NTPによって各機器の時刻が正確に同期されていなければ、攻撃のタイムラインを追うことは不可能です。また、DHCPの割り当て履歴を確認することで、問題の通信が「いつ、どの端末」から発生したのかを特定できます。これらのプロトコルを深く知ることは、証拠(フォレンジック)の精度に直結します。
無線LANセキュリティ(情シス・脆弱性診断士・ペネトレーションテスター)
無線LANコントローラーを用いた一括管理や、WPA2/WPA3といった暗号化規格の知識は、脆弱性診断士にとって重要な武器となります。オフィスのWi-Fi設定に不備がないか、ゲスト用Wi-Fiから社内ネットワークへ侵入できる経路が残っていないかなど、無線の物理的な特性を理解した上での診断が可能になります。電波という目に見えない境界線を適切に評価し、セキュリティホールを見つけ出すための基盤となります。
自動化とSDN(ネットワークアーキテクト)
SDN(Software Defined Networking)やAPIを用いた自動化の知識は、次世代のネットワークを設計するネットワークアーキテクトに必須のスキルです。従来のように一台ずつ手作業で設定するのではなく、PythonやJSON等のコードを用いて数百台の機器を一括制御する手法を学ぶことで、人的ミスを減らし、変化に強い柔軟な設計が可能になります。クラウドとのハイブリッド環境を構築する際にも、この「抽象化されたネットワーク」の考え方が設計の質を左右します。
インフラ多層防御
ネットワークの基盤となるL2(データリンク層)の対策は、情報システム部門にとって安定したネットワーク運用を支える重要な仕組みです。例えば、DHCPスヌーピングやARPインスペクションを利用することで、不正な機器によるなりすましやIPアドレスの汚染を防ぎ、通信トラブルの発生を抑えることができます。
DHCPスヌーピング
DHCPサーバーとDHCPクライアントでやりとりする「DHCP要求とDHCP応答」をスヌーピング(のぞき見)することで、DHCPサーバーのなりすましや、DHCPサーバーへの攻撃を防ぐ。
ARPインスペクション
スイッチが不正なARPパケットを検証・遮断し、中間者攻撃からLANを保護するセキュリティ機能。
一方、セキュリティエンジニアの視点では、これらの機能は内部不正や盗聴を防ぐための防御手段としても重要です。IEEE 802.1X認証やポートセキュリティなどを利用して、ネットワークに接続できる端末を制限することで、不正端末の接続を防ぐことができます。
さらに、このようなL2レベルの対策を基盤として、IDS/IPSやネットワークのセグメンテーションなどのセキュリティ技術を組み合わせることで、万が一侵害が発生した場合でも被害の拡大を抑えることが可能になります。こうした多層的な対策を実装することで、企業ネットワークや重要インフラの安定運用とセキュリティ強化の両立が実現されます。
勉強のポイント
CCNA を学習する際は、単に試験対策として暗記するだけでなく、ネットワークの仕組みを理解し、実際の機器設定やトラブル対応に活かせるようにすることが重要です。
特に、シスコシステムズ製品のコマンドを理解し、基本的な設定が行えるようになることが学習の大きなポイントです。例えば、ルーターやスイッチに対してIPアドレスの設定を行ったり、OSPFやBGPなどのルーティングプロトコルを設定したりすることで、ネットワーク機器同士が通信できるように構成します。
また、設定変更後にはshowコマンド を利用して、設定内容や通信状態が正しく反映されているか正常性確認をします。このような作業はネットワーク構築やトラブルシューティングの現場でも頻繁に行われます。
さらに、TCP/IPの通信フローを理解し、「通信のどの部分でどのような問題や攻撃が発生する可能性があるのか」といった視点を持つことも重要です。こうした知識はネットワーク運用だけでなく、セキュリティ対策を考える上でも役立ちます。
筆者自身も複数の現場でシスコシステムズ製品を扱ってきましたが、CCNA で学ぶ知識はネットワーク機器の設定変更や通信トラブルの調査など、実務の場面で役立つことが多いと感じています。
※ 本記事では主にシスコシステムズの製品を中心に説明していますが、実際のネットワーク機器にはYAMAHAやアライドテレシスなど、さまざまなメーカーの製品があります。ただし、ネットワークの基本原理は共通しているため、CCNA で学ぶ知識は他ベンダーの機器を扱う場合にも応用できます。
学習におすすめのWebサイト
CCNA の学習では、参考書に加えてオンライン教材や問題集サイトを併用すると、より効率的に知識を身につけることができます。私自身も資格学習や業務で分からないことがあった際に、以下のサイトをよく参考にしていました。
ネットワークエンジニアとして
ネットワーク技術について体系的に解説されているサイトで、CCNA や CCNP の内容も詳しく掲載されています。ネットワーク用語や技術を調べる際に辞書のように利用することができ、学習だけでなく実務でも役立つサイトです。
Ping-t
CCNA をはじめとしたインフラ系資格の問題演習ができるサイトです。過去問題形式の演習ができるため、試験対策として非常に有用です。問題を解きながら理解が曖昧な部分を確認することで、効率よく知識を定着させることができます。
TCP/IP入門
TCP/IPの基本的な仕組みについて分かりやすく解説されているサイトです。ネットワークを初めて学ぶ方でも理解しやすい内容となっており、通信の基礎を整理する際に役立ちます。書店でも販売されているので参考書として活用可能です。これらのサイトを参考書と併用することで、CCNA 試験対策だけでなく、ネットワークの基礎知識をより深く理解することができます。

Udemy
Udemy には CCNA 対策講座が多数公開されており、動画でネットワークの仕組みを理解できるため、独学でも学習を進めやすいのが特徴です。実際のネットワーク構成やシスコシステムズ製品の設定例を解説している講座も多く、参考書だけではイメージしにくい部分を補う教材として活用できます。セール期間には比較的安価に受講できることも多く、学習を始める際の教材としておすすめです。

CCNA は、ネットワークの基礎知識を体系的に学ぶことができる資格であり、ネットワークエンジニアだけでなく、情報システム担当者やセキュリティエンジニアにとっても重要な基盤となる知識です。
企業のIT環境は、PCやサーバー、クラウド、セキュリティ製品などさまざまなシステムで構成されていますが、それらを支えているのはすべてネットワークです。通信の仕組みやネットワーク構造を理解していなければ、セキュリティ対策やインシデント対応を適切に行うことはできません。
CCNA の学習を通じてTCP/IPやルーティング、スイッチング、無線LAN、ネットワークセキュリティなどの基礎を理解することで、ネットワークトラブルの原因調査やセキュリティインシデントの分析など、実務に直結する知識を身につけることができます。こうした基礎力は、マルウェア感染や不正アクセスといったサイバー攻撃から企業の情報資産を守る上でも重要な土台となります。
また、近年ではサプライチェーン全体でのセキュリティ対策が求められており、企業のITインフラを安全に運用することの重要性はますます高まっています。CCNA で学ぶネットワークの基礎知識は、こうした環境において安全なネットワーク設計や運用を行うための第一歩となります。
ネットワークとセキュリティは切り離して考えることのできない分野です。これからITインフラやセキュリティ分野に携わる方は、ぜひ CCNA を通じてネットワークの基礎を学び、自社のIT環境やセキュリティ対策を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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