
ホーム > 伸びる企業のIT活用術 > 第1回
現代の企業経営においてITは欠かせないものとなっているが、具体的に伸びる企業はどのようにITを活用しているのだろうか?IT分野で優れた見識を持つビジネスプロデューサー/コンサルタントとして中小企業経営の支援などを行っている中野てるひこ氏に、今回から6回にわたってお話を伺う。
第1回の今回は、次のようなお話を聞くことができた。

企業を取り巻く環境が大きく変化するなかで、企業規模を問わずIT活用の重要性がますます高まっています。同じような業種・業態の企業があったとしたら、ITを有効に活用できている企業の方が成長性が高い、というのは当たり前の理屈でしょう。私が中小企業のコンサルティングなどの仕事を通じて感じていることは、成長する企業ほどITをうまく活用しているということです。とはいえ彼らは特別に先進的なIT製品を導入していたり、ITに詳しい人材を雇っていたりするわけではありません。では、何が違うのでしょうか。
答えは簡単です。「目的・目標」が明確であるということです。ITで何をしたいかをまず明確にし、それに合ったツールを導入する。導入後は、目標に近づいているのかどうかを検証し、さらに改善していく。というように、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)」の流れが明確なのが伸びる企業の特徴です。同業他社が導入しているから、大企業と同じだから、という「ITありき」の考えだと、結局うまく使いこなせなかったりして、投資が無駄になってしまいます。
では、伸びる企業がITを使ってやっていることは何でしょうか。簡単に言えば「見える化」です。最近、巷でよく聞く言葉ですね。ITの視点では、社内の情報を見えるかたちにするという意味で使います。
ちょっと昔を振り返ってみましょう。ITがない時代の伸びる企業には、ビジネスモデルが明確という特徴がありました。例えば、ヤマト運輸は、送料が高くて時間のかかる郵便小包しかなかった時代、小口荷物を全国どこにでも翌日に届けるという画期的なサービス「宅急便」を開発。全国のお米店や酒店を集荷拠点にすることでネットワークを築き、普及させました。ビジネスモデル自体が明快でお客様にも従業員にも伝わりやすいものだったため、爆発的に成功したのだと言えます。
しかし昨今のビジネスモデルは以前よりも複雑化しています。インターネットの普及によって取り扱う情報量が激増し、また顧客とのチャネルも多様化しているといったことがその理由として挙げられるでしょう。それに合わせて業務プロセスも複雑化しています。経営者や従業員が会社の現状を把握したり、お客様に業務内容を正しく伝えることが難しくなっているのです。
その複雑化した業務を情報として記録して、把握しやすくすることが「見える化」です。業務を目に見えるかたちにすることで、的確な経営判断に活かすことができたり、社内外に自社を上手にアピールしたりすることが可能になります。このように、情報を上手に活用するために効果を発揮するツールが、ITというわけです。
「見える化」に必要なステップについて、ご説明しましょう。まず「現状把握」。自社が今どの段階にいるかを客観的に記録し、それを可視化します。現状把握ができないと目標も定まりません。営業活動、契約、納品、入金という事業活動の流れを記録しておき、見たい時に見えるようにしておくことです。経営に必要な数値を見えるようにしたり、営業活動の状況を共有するなどはITの得意とするところ。現状がリアルタイムで見られるようになっていれば、「この月の売上だけ下がっているな」「A社の取引は、売上と利益のバランスがおかしい」など、様々な点で気づきが得られます。スピーディーに次の戦略が実行できたり、原価管理や在庫管理の精度をより高めることができたりと、いろいろな効果があるのです。
また、業務の記録をきちんと取っておくことは、コンプライアンス強化にもつながります。話題の日本版SOX法は、大企業だけの話ではありません。企業規模を問わず、企業活動が顧客からの信頼で成り立っている以上、コンプライアンスの必要性は変わらないのです。たった一人の社員の法令違反で、顧客からの信頼を失うこともあるからです。
次に「業務のドキュメント化」。業務の手順やノウハウといったものを、ルールやテンプレートを決めてドキュメントにして保存しておくことです。業務マニュアルなどがわかりやすい例でしょう。大企業なら業務マニュアルがあるところが多いと思いますが、実は中小企業にこそマニュアルは必要なのです。一人の担当者が辞めたら、業務が回らなくなった、営業力が途端に落ちてしまった、ということもあるからです。ノウハウの蓄積がなされなければ成長力は鈍化します。業務を文書にすることで、「誰々の仕事のやり方がとても効率的だった」「業務の中で大きなリスクが潜んでいた」といった思わぬ発見もあります。
次の段階としては、情報の活用です。社内コミュニケーションの充実や、社外への情報発信を図ったりします。これに関しては企業サイトやブログを活用できます。具体的な手法についてはこの連載の後半でお話ししたいと思います。同時に、「お客様の声」を把握することも重要です。お客様にどう認識されているかを知れば、営業活動や商品開発のヒントになります。やり方は至って簡単。お客様に電話して「当社の製品・サービスのどこが気に入っていますか?」と聞くだけ。購入前の営業電話は煙たがられますが、購入後なら意外と話をしてくれますよ。そこで思いがけない言葉が返ってくるかもしれません。これは、大企業なら多くの予算を投じて当たり前のようにやっているマーケティング活動と同じことです。中小企業といえども、簡単で効果の高いプチ・マーケティングはやるべきだと思います。もちろんそこで得た情報を記録しておくことが大事です。
さらに昨今では忘れてはならないのはセキュリティです。ビジネスモデルが複雑化し、取引先との接点が増え、取り扱う情報量が増えているのが現代の企業です。少しでも顧客の情報を扱うビジネスであれば、その管理はおろそかにすることはできません。企業の存続に関わってくる重大な問題です。データの管理やバックアップなど、アウトソーシングも利用しながらうまく運用管理していくことが必要です。
さて、IT活用を進めようといっても、何から手を付けるべきか見当も付かない、という方も多いのではないでしょうか。そこで利用したいのが外部の専門家、例えば「ITコーディネータ」です。ITコーディネータは経済産業省の推進資格で、経営とITの橋渡しを行うプロフェッショナル。中小企業の良きアドバイザーとして、ITの上手な使い方をナビゲートしてくれます。また、商工会議所のIT推進課などでも相談に乗ってくれるでしょう。自社のことをよく理解してくれて、適切なインフラやツールを提供してくれるSIerなども良きアドバイザーです。相談に乗ってもらう時に忘れてはならないことは、やはり目的を明確にすることです。
以上、今回は総論的にITの必要性や活用の方法を語ってきました。次回以降は、もう少し具体的な方法について説明していきます。例えば、今回概要だけ触れた「見える化」へのステップについて、そのポイントや注意点をご紹介しましょう。
ITの活用は企業にとって成長のカギであり、難しい課題です。専任の人材が確保できない中小企業にとっては、ITコーディネータなど外部の専門家の活用は有効な手段といえそうですね!
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